全速力で人生を進もう!と思ったとして、どういうやり方が「全速力」に相当するのでしょうか? 毎日睡眠時間を4時間ちょっとにして起きている間にがむしゃらに働く、勉強する、がそれに相当するのか?と疑問に思ったことがあります。たしかに孫正義さんはそんなふうに生きて会社を大きくしてきました。でもああいったやり方が、わたしたちの生産性をマックスにしてくれるのか?科学的なこたえはこうなりました。
Source: Daniel Cook on the 8 Laws of Productivity
この図の赤い点線は週に60時間働いている場合の生産性を示しています。真ん中の黒い点線は週に35時間働く場合の生産性です。週に35時間、平日のみ働くなら1日7時間労働は、生産性が安定しています。このように「すごい頑張っている人」は、4週間後(だいたい1ヶ月経ったあたり)から、残業しないで帰っている人より生産性が下がり始めます。二ヶ月後には残業していない人より総生産性が下がります。
ということは、経営者は、深夜遅くまで熱心に働いている社員より定時にさっさと帰る社員を奨励したほうが良いことになります。自分も含めて。
でも残業していると「すごい働いている」「すごい頑張っている」気がしてきます。これが実は「気のせい」でした。
source: Laws of Productivity at Slideshare
このグラフは、上の実線が「感じている生産性」で下の点線が、「実際の生産性」を示しています。右に行くに従って時間が経過しています。残業して働く人たちは、実際の成果よりも「もっと成果を出している」と感じる傾向があることがわかります。これはマルチタスクにも同じ傾向があります(※1)。マルチタスクは長時間と同様に「働いている気分」は増えますが、実際の生産性は低下しています。
ロンドン大学の60万人のデータを使ったメタ分析(※2, 3)によると
労働時間が週40時間までは問題なし
労働時間が週41時間〜48時間になると脳卒中リスクが10%上昇
労働時間が週55時間を超えると脳卒中リスクが33%、心疾患リスクが13%、糖尿病リスクが30%上昇
という結果になりました。ちなみに日本の厚生労働省は週80時間の労働時間を過労死ラインとしています。
2019年2月18日の日本経済新聞の1面にある大手上場企業が、1日の労働時間を7時間15分にしました。「効率化で生まれた利益は、社員に還元する」と宣言し、全社員の月給を1万円増額した上で2017年から労働時間の短縮に乗り出した結果の労働時間です。1年後のこの企業の売上高は、2.2%増となりました。ただ単に労働時間をへらすだけではなく多くの工夫をしてきた結果ですが、興味深い試みです。この企業は、味の素。2015年に就任した西井孝明社長が「残業ゼロ」を目指して取り組んだ結果でした。
こちらの本でその工夫が紹介されています。
平均で年に130億ドル、つまり1.5兆円ぐらいの収益がある企業の経営者がどれくらい働いているのかというと(※4)
平日平均労働時間:9.7時間
週の平均労働時間:62.5時間
会議の数は週に37回(全体の労働時間の72%)
残りの15%は、電話、書類の閲覧、書類の返信
残りの24%は、電子メールやSNSのコミュニケーション
1日のリラックスタイム:2.1時間(読書や映画、趣味)
睡眠時間は平均で6.9時間
運動時間は1日45分
という結果になりました。働きすぎなわけですが、働かければいけない従業員と働きたい経営者では、労働時間による影響は異なってくるのではないでしょうか。それにしても100億ドル規模の企業経営者の仕事ってほとんど会議と返信なんですね。
1.5兆円もの会社を経営していたら楽しくて働きまくりたくなるかもですが、基本働く時間が短いほうが生産性が高くなります。わたしは週35時間よりもっと労働時間を短くして年収1億円くらいにしたいと考えており、これを読んでいます。
ちなみに今の所成功していません。どうなるんでしょうかね。
※1Want to become more productive? Stop multitasking.
※4130億ドルを稼ぐ企業の社長さんはどんな時間の使い方をしているのか?みたいな調査
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