以下は、ニューヨーク大学の経営大学院のスターン・スクールのPriya Raghubir 教授とメリーランド大学のJoydeep Srivastava 教授が2009年に発表の研究(※1)です。
89人の学生を対象にして25セント硬貨4枚(1ドル)を与えるグループと1ドル札を与える2グループを作り、それぞれにお菓子を買ってもいいという指示をだします。2グループともにお菓子を買うのですが、25セントのグループのうちお菓子を買ったのは63%でした。一方、1ドル札のグループでお菓子を買ったのは26%でした。人は、小銭だと多くお金を使い、額面が多い札を持つと使う額が減るようです。これを「額面効果(Denomination effect)」といいます。
額面効果(Denomination effect)とは
額面の大きな紙幣を手にすると節約するのに、
小銭を手にすると気軽にお金を使う傾向
です。認知バイアスのひとつ。「小銭効果」とか「通貨効果」とも翻訳されています。
額面効果には3つの特徴があります。
(1)金額が同じでも、額面が小さい場合(千円札×10枚)のほうが、額面が大きい場合(1万円札×1枚)よりも使う可能性が高い
(2)支出を管理するとき、小銭よりも額面の大きな紙幣を受け取ることを人は好む
(3)額面効果は、お金を使う不安と関連していて、金銭的な不安を持っている人は額面の大きな金額を使うことを嫌がる
Raghubir 教授らは、額面の大きな紙幣が交換できる可能性が低いことが、この額面効果のもとにあるのではないかと考えました。また、人は、大きな額面の紙幣を、たとえ同じ金額でも少額の額面の紙幣の集まりより価値が高いと考えがちです。直感的に1万円札を千円札より価値が高いと捉え、たとえ同じ金額でもより貴重に感じてしまうようです。
他にも2009年の雑誌TIMEのSean Gregory 氏による記事(※2)では、人は大きな額面の紙幣を崩してしまうとすぐにお金を使ってしまいそうで、人は大きな額面の紙幣を持っているときそれを使いたがらないのではないかと推測しています。
額面効果を使って、支出を抑えたいなら財布には常に高額の紙幣をいれておくと良いという工夫が可能です。しかし最近電子マネーが普及してきて、高額紙幣を持つ効果も減ってきているかもしれません。
しかしこの額面効果の知識は、株式投資の場面でも応用可能です。株には1つの株が2つになる株式分割というものがありますが、株式分割されるとより購入しやすくなると考えられています。企業価値は変わっていないのに株式分割されると、購入しやすい株式と認識されるということです。(※3)
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。
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※1:Why We Spend Coins Faster Than Bills