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2020/12/13
【経済を少しずつ知ってみる】(1)インフレーションとは/その最近の実例も
筆者:大田忍

経済について少しずつ知る」シリーズ(1)は、知っているようで説明できるほど知らなかったインフレーションの意味と実例について。

 

ほかにもデフレやスタグフレーションがあるけど

デフレ、スタグフレーションなど関連した経済学の言葉がありますが、今回はインフレーションについてのみ掘り下げてみます。

インフレーションとは

インフレーションは、英語でInflatoin。意味は、膨張。日本語だと通貨膨張。本来は、市中に出回る通貨の量が膨張(増加)していくことを意味したmonetary inflation。日本語だと貨幣的インフレーション

「お金を作りすぎちゃったあ」というのが貨幣的インフレーション

一方で、物価が高くなることをprice inflationと言います。日本語だと物価インフレーション。一般的にこちらの意味で多く使われています。なので、インフレーション、インフレとは、物価が高くなり、通貨の価値が相対的に下がること。インフレーションが進むと、利率が低い銀行預金は、その価値が減っていくことになります。

たとえばインフレーション率、つまり物価の上昇率が年率4%、銀行預金の利率が3%だとします。

欲しい車の価格が100万円
銀行預金が100万円

これが1年後

欲しい車の価格は104万円
銀行預金は103万円

となり、1年前には欲しい車が買えた資産が、買えなくなるほど価値が下がります。

このインフレ率4%、銀行預金の利率3%という数字は、差し引くと-1%になります。この数字は、実質金利となります。預金しておくとその価値が実質は-1%になると言う意味です。ちなみにもともとの銀行預金の利率の3%は、名目金利と言います。

世界のインフレーション率

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インフレーション率(青い部分はデフレーション状態)
Amillians – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=83641387による

この地図の青いところはインフレ率がマイナスです。(サウジアラビア、イラク、ニジェール、パナマ )インフレ率がマイナスなことをデフレーションと言います。

4種類のインフレーション

(1)実物的要因によるインフレーション
戦争などにより供給が需要を大きく下回ることで発生するインフレーション。需要が高すぎて物価が高くなる。物不足状態で起こるインフレーションです。

(2)需要インフレーション
需要が高くて物価が高くなるもので、高くなっても購買意欲が落ちない状態を意味しています。物が売れて、景気が良くなっている状態。デマンドプル・インフレーション(demand-pull inflation)とも言います。この場合、実質GDPは増加します

(3)供給インフレーション
為替レートが下落し、自国の通貨の価値が下がると、輸入物価が上昇します。そうすると景気が良くなくても物価が高くなります。これを供給インフレーション。コストプッシュ・インフレーション(cost-push inflation)と言います。景気は悪化し、スタグフレーションに陥ります。この結果、実質GDPは減少します

(4)貨幣的要因によるインフレーション
中央銀行による貨幣の供給量が増えることで発生するインフレーションを貨幣的要因によるインフレーションと言います。本来のインフレーション(貨幣膨張)はこれに相当。貨幣より債券の価値のほうが相対的にあがり、投資が増えやすくなります。そうして需要が増え、需要インフレ(1)になって、貨幣的要因によるインフレーションは需要インフレーションになっていきます。

経済への影響

インフレーションは、固定の給与をもらう側には損となり、払う側には得になります。結果、理論的には、雇用しやすくなり、失業率が下がります。実質GDPが増加するディマンドプル型なら雇用は増えて、実質GDPが減るコストプッシュ型では雇用は減ります。

インフレーションの実例、ジンバブエ

アフリカは上記の地図を見て分かる通りインフレ率がとても高い地域なのですが、なかでもジンバブエがすごい。ジンバブエとはここ。

ジンバブエは2008年にハイパーインフレに陥りました。どれくらいハイパーかというと89.7セクスティリオン%。セクスティリオンとは10の21乗。sextillionと書きます。ちょっと想像がつかないインフレ率です。このときのジンバブエの通貨は、ジンバブエ・ドル。このハイパーインフレによってジンバブエ・ドルは価値を失い2015年に廃止されました。こちらは、2009年に発行された「100兆ジンバブエ・ドル札」。

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2009年に発行された100兆ジンバブエドル札
Misodengaku – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=13121746による

ものすごい余談ですが、この紙幣に使われている書体は1927年にドイツのパウル・レンナーによってデザインされたFuturaという書体です。ルイ・ヴィトンのロゴにも使われている書体です。これから公開される007の新作のタイトルもFuturaです。

ちなみにハイパーインフレとは、月間インフレ率が50%以上となった状態を指します

ジンバブエのハイパーインフレの原因

ジンバブエのハイパーインフレの原因は、ひとつには通貨の量の増加。いわゆるマネーサプライの増加。ジンバブエは2000年初頭から労働者への賃金増加要求への対応や選挙費用の捻出のために通貨を無節操に発行しました。これによりインフレは起こります。これは貨幣的インフレーションです。

加えて品不足により物価が上昇。これは物価インフレーションですね

またもうひとつ加えて、当時のジンバブエのムガベ政権は、白人の地主から黒人が土地を取り上げることを合法化しました。黒人が白人から力づくで土地を奪うも、農業のノウハウがわからず、生産量が激減し、食料不足になりました。これで物価インフレーションは加速しました。

他にも「外資系企業の株式強制譲渡法案」というものが2007年にジンバブエの議会を通過しました。ジンバブエに進出している外国企業の株式のうち半分をジンバブエの黒人に譲渡しなくてはならないという、むちゃくちゃな内容。もちろん外資系企業はジンバブエから撤退。さらに物不足は加速。

他にもありますが、こんなふうにしてまれに見るハイパーインフレーションがジンバブエで起こりました。

ジンバブエのインフレが再来している

そんなジンバブエでインフレが最近また起こり始めています。ジンバブエって2015年にジンバブエ・ドルが廃止され、その後、アメリカ合衆国ドルが使われました。その後、アメリカ合衆国ドルの不足を契機に導入したRTGSドルが2019年6月になり、公式通貨となります。ジンダラー(Zimdollar)やゾラー(Zollar)とも呼んでいます。しかしこのRTGSドルもすぐにインフレを起こし、2019年8月の段階で前年比559%のインフレ率。

たんですが、代わりに使っていた米ドルが不足して2016年に

日本のインフレ率

日本のインフレ率は、2019年では0.48%、2020年には-0.06。推移をグラフにするとこうなります。

画像3

日本のインフレ率の推移
https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=PCPIPCH&c1=JP&s=&e=

まとめ

お金というのは、通貨を手にしたとき、(例えば札束など)リアルに感じますが、実質その価値は、相対的なものです。そもそも共通の妄想で成り立っているもので、この妄想から醒めてしまうとただの高度な技術で印刷された紙になってしまいます。

その相対性をしっくり理解するのに良い切り口が、実質金利というもの。銀行口座、またはタンスに入れた100万円(べつに1000万でも1億円でも良いですけど。ちなみに1億円の重さは10kgあります)の価値が、時間が経つと変化するということをしっておくとお金の運用について考え始める契機となります。

運用というとある程度の量がないと考える必要がなさそうに思えますが、100円だろうが1万円だろうが、その価値をどう使うか、増やすか、ということを考えて行動することを指します。