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2021/03/06
オークションで最高入札者になると冷静でなくなる!? 「保有効果」
筆者:

 

自動車を購入するときに、いくつかあるブランドのなかからあるブランドを選んで所有することになりました。すると買うまえより手にしてからのほうがそのブランドを好きになり、より高く評価するようになりました。

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なんてことってよくありますよね。これは有形無形に関わらず、発生する価値評価の変更です。思い浮かんだアイデアは捨てにくいし、気に入ったアクセサリーは買った価格で買取をオファーされても、なかなか承諾しがたくなる。これを保有効果、授かり効果、剥奪忌避と言います。

保有効果とは

手に入れた物を手放すことを、非理性的に嫌がる傾向。

また別の言い方をすると

あるモノに対しての価値の評価が、それを所有していないときよりも、手に入れてからのほうが高くなる傾向。

英語では、Endowment effect。「endowment」は、「授ける」「贈る」などを意味する「endow」の名詞。ゆえに「授かり効果」と翻訳されてもいます。または「剥離忌避(divestiture aversion)」とも。保有効果が原語に近いのでわたしはこの翻訳を採用しています。

この所有効果、手にしてわずか数分で発生します。ちなみに人間のみならずチンパンジーにもこの保有効果はみられました。

またアリストテレスもこの保有効果に相当する言葉を残しています。

“ほとんどの物事において、それを所有している人とそれを欲している人との間にその価値が異なるということが発生しています。わたしたちが所有しているもの、わたしたちが与えるものは、わたしたちにとって非常に貴重なものになるようです。”
(For most things are differently valued by those who have them and by those who wish to get them: what belongs to us, and what we give away, always seems very precious to us.)
—ニコマコス倫理学—

得ます。

論拠

保有効果は、研究や書籍は、ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)、ジャック・L ・クネッチ(Jack Knetsc)、リチャード・セイラー(Richard Thaler)らによるものが有名です。

Experimental Tests of the Endowment Effect and the Coase Theorem (1990年)

研究の内容は、参加者にマグカップを与え、そのあとそのマグカップを販売するか交換する機会を与えると、そのマグカップと同等の価値のあるものとの交換を嫌がり、手放す決断をする価格はマグカップの価格の2倍になりました。

その他の研究は、Ziv Carmonとダン・アリエリー(Dan Ariely)らの”Focusing on the Forgone: How Value Can Appear So Different to Buyers and Sellers”(2000年)

これらは、認知バイアス№62の損失嫌悪№96の現状維持バイアスプロスペクト理論と関係があります。また心理的惰性もこの認知バイアスに含まれているかもです。所有しているものは所有したままにしたい、というのが心理的惰性です。

構造

従来は、損失嫌悪によって保有効果が発生してると考えられていましたが、最近になると損失するまえから保有効果は発生しているという見方のほうが優勢になってきています。

この保有効果は、ものを手に入れるときと手放すときで、そのものに対する認知フレームが異なっていることから発生しているようです。手に入れるときは、それに支払うべきお金などを手放さなくて良い理由を探します。つまり今、所有しているお金に対して保有効果が発生し、相対的にまだ手にしていないモノの価値が低くなります。一方で、一度モノを手にすると保有効果が発生し、それに対して支払われるお金を相対的に低く評価します。こうして、価格差、価値評価の歪みが発生していると考えられています。

これに加えて、心理的オーナーシップ(psychological ownership)というものも発生します。つまり所有しているモノは自己に関連したモノという認識がされるようです。「俺のもの」という感覚ですね。

応用・対処

たとえばGmail。わたしたちは無償でこれを使用していますが、このサービスを途中から課金するした場合、まだGmailを使っていなかった人が支払うであろう金額の2倍、すでに使っているひとは払う可能性があります。これも保有効果です。

この買い手と売り手の価値評価のギャップを是正する方法は、対象物への注目度を減らすのが有効です。2つ方法があって、1つは、売り手は、所有しているモノを売却することで手に入る金額を使って何をしたいのかを考える。するとモノを絶対視していた認知フレームから相対的な見方に変わります。買い手も支払う金額から一度目をそらし、モノを入手したとき何ができるのかを考えると相対的にモノの価値が上がるようです。2つめは、売り手も買い手も代替品について考えると保有効果が生み出す価値評価の歪みは是正されます。ネットオークションサイトなどでは、似たモノの平均価格がわかってくるので保有効果は是正されているかもです。

応用としては、売り手は、販売するものを買い手に一度、保有してもらうと購入機会が増えますお試し期間を設ける、試乗する、または引き換え券を渡すことでも保有効果が発生します。一度手にいれてしまうからです。またオークションにおいて一度最高入札者になるということでも保有効果が発生し、そのモノを手放したくないという気持ちが発生します。

まとめ

これって恋愛にも当てはまるかもしれませんね。ひょっとしたら。売り手としても買い手としてもこの保有効果は何かとわたしたちの意思決定に大いに関わってきます。冷静な判断をするためにも、ぜひとも身につけたい武器です。

参考図書

またまたダニエル・カーネマン氏の『ファスト&スロー』(下巻)

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§1 損失嫌悪(№62)

§2 現状維持バイアス(№96)

§3 プロスペクト理論

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