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2022/04/25
意外にすごい人気! 日本も目指した、SFが描く未来と書体“Eurostile”
筆者:-

知っていますか? Eurostileという書体

Eurostile
Source: www.flickr.com Uploaded to Flickr by Joe Clark and tagged with “eurostile”. License: All Rights Reserved. via Fonts in Use

この四角いっぱいに広がる幾何学的な書体は、Eurostile(ユーロスタイル)という書体です。見覚えはありませんか?たぶんあるはずです。後ほど、この書体がどこで使われてるのか、またこの書体がもつニュアンスも実例を交えて紹介していきます。まずはこの書体そのものについてお話していきます。

Eurostile
By The original uploader was Senor ibex at English Wikipedia. – Transferred from en.wikipedia to Commons., CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9996450

書体名:Eurostile(ユーロスタイル)
カテゴリー:サンセリフ体(ジオメトリック)
デザイナー:Aldo Novarese(イタリア)
鋳造所:Nebiolo
リリース年:1962年

Eurostileは1962年にAldo Novarese(アルド・ノバレーゼ)によってデザインされた幾何学的なサンセリフ書体です。ノバレーゼ氏は、トリノにあるイタリアで最も有名な鋳造所の一つ、NebioloのためにEurostileを制作しました。

Eurostileは、ノバレーゼ氏がデザインに携わった書体、Microgrammaの後継として開発された。

Microgram (1952)

Microgrammaは、大文字のみを使用したタイトル用フォントでした。しかしMicrogrammaは大文字だけでした。10年後、ノバレーゼは、この制限を解消するためにEurostileをデザインし、小文字、コンデンス体(横幅を狭くしたもの)のボールド(太い)、Eurostile Compactと名付けた極細のデザインを加え、計7書体を制作しました。

Eurostileは、特に見出しやサインに良く使われる人気の書体です。(現在でも!)直線的なフォルムは近代建築(モダニズム)を思わせ、技術的・機能的な魅力があります。角の丸い四角い形は、1950年代から60年代のテレビ画面を思わせるところがあります。1960年代から70年代にかけて制作されたSF作品などでよくつかわれました。さらに20世紀末でもSF書体として頻繁に使用されてきました。

Eurostileが持つニュアンス

という経緯もあって、Eurostileには、次のようなニュアンスがあります。

  • ミッドセンチュリーモダンやモダニズム建築(技術と機能)

  • 20世紀後半が描く未来(SF書体)

では、実際にどこにこのEurostileが使われているのか、見ていきましょう。

映画『2001年宇宙の旅(Space Odyssey)』(1968年)

スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』のなかで、頻繁に使われています。とくにHALという人工知能とインターフェイスに使わています。

映画『2001年宇宙の旅(Space Odyssey)』より
映画『2001年宇宙の旅(Space Odyssey)』より

ちなみに映画のタイトルに使われている書体は、イギリスの書体、Gill Sans。(しかしキューブリックが好きな書体はFutura。)

『スタートレック・エンタープライズ』

映画『ターミネーター(1と2)』

『ターミネーター(1)』(1984年)のエンディング
Pacific Western Productions and Hemdale Film Corporation / Orion Pictures. License: All Rights Reserved.

あのタイトルはEurostileじゃないんです。あれは“earth”というフィルム書体です。

こっちはearth
https://www.youtube.com/watch?v=CRRlbK5w8AE&ab_channel=MovieclipsClassicTrailers. License: All Rights Reserved.
これの「&」だけEurostile。小さい字はHelvetica。大きな字はearth。
Pacific Western Productions and Lightstorm Entertainment / Tri-Star Pictures. License: All Rights Reserved.

東芝のロゴ

これ、Eurostile (Black) なんです。1984年から東芝はこのロゴ。

カシオのロゴ

カシオは1972年からEurostile(Black)を使ったこのロゴ。

『エヴァンゲリオン』

『エヴァンゲリオン』にもときどきEurostileが使われています。

“RESCUE”の部分がEurostile
source: Fonts in use “Neon Genesis Evangelion”
R-08の部分は、Eurostileのステンシルバージョン
source: Fonts in use “Neon Genesis Evangelion”
KUROSHIOのロゴがEurostile
source: Fonts in use “Neon Genesis Evangelion”

ホンダシビック(1997)のメータ

メータの数字がEurostile
Photo: Ian Lanius. License: All Rights Reserved.

Eurostileの持つニュアンス

元来、1962年に誕生した当初は、直線的でいながらに柔らかみもあり、そしてややもっさりしたEurostileは、近代的(モダン)であり、機能的なニュアンスの書体でした。それが『2001年宇宙の旅』(1968年)などのSFで使われ、(当時の)「未来的な」ニュアンスが加わりました。『2001年宇宙の旅』の翌年には、アメリカ合衆国はアポロ11号で月面着陸を達成し、世界がSFに追いつき始めたという気配が世界中に広がり、熱気を帯び始めます。そんななか、東芝やカシオのロゴが、Eurostileをつかったものに変わっていきます。未来、機能、近代的、(そして幾分男性的)というニュアンスを、この書体持ちはじめて、そのニュアンスを使ったタイトルやロゴが生まれていきました。

ちなみにわたしが使っている新潟県燕市に本社のある吉田金属工業が作る包丁シリーズ“Global”のロゴのEurostileをつかったものです。

ここにも、洗練された機能美というニュアンスが含まれています。

オンラインストア | GLOBAL包丁の吉田金属工業株式会社 www.yoshikin.co.jp

書体はこのように時代を経て変質したニュアンスを持ち、それが使う企業やブランド、作品が描く未来像を伝えるのに機能しています。書体というのは、そういう意味では、着る服やつける香水、乗る車などにも似たところがあります。自分が持つ哲学や指針を示すからです。

それにしても、Eurostileは、その名以上に、姿が多くの方の記憶に残っている書体ではないでしょうか。意外なほど身近にありましたね。EurostileはMyfontsから購入できます。

Font Family Page www.myfonts.com

Font Family Page www.myfonts.com

参照

Eurostile – Wikipedia en.wikipedia.org

Aldo Novarese – Wikipedia en.wikipedia.org

Nebiolo Printech – Wikipedia en.wikipedia.org