(出典:Chaplins)
照明ブランドのなかで、良質であることを示唆する記号になるほどの知名度の高いイタリアのブランドです。映画や店舗のインテリアとしても良質の記号として使われています。
たとえば、ARCOというフロアライト。
(画像引用:FLYMEe ARCO)
これは、安価なレプリカも売られていますが、Flosの本来の価格では約29万円のフロアライトで、ヨーロッパのアパートメントは築年数が高く、良き場所にペンダントライトを設置するのが難しい住居が多く、それを解決する照明としてFLOSの創業者たちであるカスティリオーニ兄弟が1962年にデザインしたものです。映画『アイアンマン』、『Tron: Legacy』などに出てきます。
映画『アイアンマン』
(画像引用:Film Furniture)
こちらは、フィリップ・スタルクデザインのKtribeという照明ですが、これも映画『アベンジャーズ』に出てきます。価格は約13万円。
ほかにはAesopというオーストラリアのスキンケアブランドの南青山店では(たぶん今も)FLOSのTacciaという照明が使われています。
Taccia
(画像引用:FLYMEe Taccia LED 2016)
こちらのテーブルライトは、カスティリオーニ兄弟のデザインです。
Flosは、イタリア語で「花(Flower)」の意味。創業は1962年。アキッレとピエル・ジャコモのカスティリオーニ兄弟によって設立されました。
Achille & Pier Giacomo Castiglioni
(画像引用:Flos Achille & Pier Giacomo Castiglioni)
フロス設立の目的は、コクーンという樹脂コーティング素材をつかった照明の開発でした。その開発に成功し、FLOSは、世界的な名声を獲得していくブランドとなっていきます。
以来、カスティリオーニ兄弟のみならず、多くの優秀なデザイナーたちがFLOSの照明をデザインしてきています。
FLOSのなかでも有名な商品をいくつかピックアップしてみましょう。ここでは紹介していませんが、日本人のデザイナー佐藤オオキさん(NENDO)がデザインした照明、Sawaruのあります。
FUCSIA(フクシア)
(画像引用:yamagiwa)
デザイナー:アッキーレ・カスティリオーニ
44,000円(税込)※LED @yamagiwa
下を向く花、フクシアをイメージしたペンダントライト。ちなみにフクシアという花はこちら。
(By Gold Bernard – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=17614267)
テーブルへの直接光に加えて、拡散光も同時に放ち、日中は透明なガラスのシェードで存在感を軽減させています。
ARCO
(画像引用:FLYMEe ARCO)
291,500円(税込)@FLYMEe
冒頭でも紹介したARCO(アルコ)。ARCOは、アーチを意味しています。アッキーレ・カスティリオーニが街頭からインスピレーションを得てデザインした照明で、ダイニングテーブルの中央にシェードがくるように意図してデザインされています。シェードは二重になっており、外側を回すと光の方向を変えられます。ベースには大理石が使用されていて、これが65キロもあります。空いている穴は、棒を差し入れて移動するためのもの。
PARENTESI(パレンテージ)
(画像引用:yamagiwa Flos Parentesi)
46,200円(税込) @yamagiwa
床と天井のあいだにワイヤーを張って設置する照明。1970年にアッキーレ・カスティリオーニによってデザインされました。パレンテージはイタリア語で「間」という意味。
SNOOPY(スヌーピー)
(画像引用:FLYMEe SNOOPY)
184,800円(税込) @FLYMEe
アッキーレとピエル・ジャコモのカスティリオーニ兄弟によって1967年にデザインされた照明。スヌーピーに似ているのでこの名。まあまあ大きくて高さは37cmほどあります。
Superloon
(画像引用:Cassina IXS)
605,000円(税込)@Cassina IXS)
英国のデザイナー、ジャスパー・モリソンがデザインしたフロアライト。月をイメージしてデザインし、照明の向きを変えて、間接光にも読書灯にもできます。色温度も変更可能。
Kelvin Edge Base(ケルヴィン・エッジ・ベース)
(画像引用:FLOS Official website Kelvin Edge Base)
74,800円(税込)@yamagiwa
デザイナーは、ミラノ出身のアントニオ・チッテリオ(Antonio Citterio) とToan Nguyen。内装が2019年に新しくなったマンダリンオリエンタル東京の客室でも使われていました。
FLOSは、時代を超えて多くのデザイナーたちにプロダクトデザインを依頼してきていますが、一貫してそのデザインにイデオロギーを内在させています。それは、ミッドセンチュリーらしさ、というよりはモダニズムの流れを組む幾何学的なフォルムと削ぎ落として残すLess is betterな価値観と、わたしは想定しています。(Table Gunなどちょっと異色なデザインもありますが。)
ちなみにFLOSが公式サイトなどで使用している書体、つまり制定書体(企業やブランドがアイデンティティを示すために使用する書体)は、アドリアン・フルティガー(Adrian Frutiger)という超著名なスイスの書体デザイナーです。
(画像引用:Myfonts)
Avenir next ※リンク先はMyfonts “Avenir Next” Avenirの進化版で、日本人の書体デザイナー、小林章さんもデザインをフルティガーとともにしています。
Avenirは、未来という意味の書体で、同じく未来という意味を持つFuturaを意識してデザインされています。スターバックスでもこのAvenirという書体が使われています。
AvenirとFuturaについて当の小林章さんがブログで触れています。
どうして、ここでAvenirの話をするのかと言うとこの書体を使っているところからもFLOSの哲学や価値観を少しうかがい知ることができるからです。Avenirという書体は、ジオメトリックという幾何学的なという意味の種類のサンセリフ体なんですが、ちょっっっっっと柔らかみがあるんです。人の気配がある。洗練されているんですが、Futuraのようなちょっと冷たさがないんです。このニュアンスが、FLOSの製品全般に通底している気がします。
こんなふうに書体や製品のブランドから、それぞれのコンセプトやニュアンスをわたしたちは無意識に受け取っていることがあるんですが、そのサインや刺激の出自を知っていくと理解が進んで深まってとても楽しいです。
わたしは、その知識を使って、空間のプロデュースやブランディングをしています。
書体は、Freie Initialen-AR が近いけど、オリジナルか。
Freie Initialen are derived from initials made for the Stempel Garamond series. The type was issued in 1928 in three sizes (36, 48, and 60 pt); the AR version follows the 60-pt design.