ブラームスの交響曲第1番は、指揮者、ハンス・フォン・ビューローをして「ベートーヴェンの交響曲第10番」と言わしめています。
その評価が示すように、ロマン派に属しながらも、古典主義を尊重した作風。19世紀のドイツのピアニスト、作曲家。
まず、先のハンス・フォン・ビューロー(Hans von Bülow)とは、どういう指揮者かというと1830年生まれのドイツの男爵であり、指揮者、ピアニスト。ヨハン・セバスティアン・バッハとルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとヨハネス・ブラームスの3人を“Three Bs”(3大B)と総称したのも彼。後にブラームスと仲良くなるクララ・シューマンの父に9歳でピアノを習っています。
管弦楽のための最も規模が大きなものを交響曲と呼びます。英語ならSymphony。原則として4楽章から成ります。少なくとも1楽章がソナタ形式。
ソナタ形式
音楽における起承転結の形式。
ひとつのテーマを
•提示部
•展開部
•再現部
で展開していくもの。
全体的に、すごい不遇だったわけでもハチャメチャだったわけでもなく、ひとつひとつに可愛らを感じるエピソードが、彼にはあります。
ハンブルクで生まれたヨハネスは、「ブラームス」と刷り込まれたいたラストネームにも関わらず、家の表札には(19世紀のハンブルクに「表札」ってあったの!?)、Brahmstと書かれていて、それが嫌で、ヨハネスは、指でtの字をこすり、しまいには消してしまっていたそうです。かわいい。
作品が人気を博して財政的に余裕ができても質素な生活を好み、朝はプラーター公園(ウィーンにある)を散歩し、昼には「赤いハリネズミ(Zum roten lgel)」というレストランに出かける習慣がありました。相性があまり良くなかったワーグナーの影響を受けていたアントン・ブルックナーと衝突していたのですが、同じウィーンに住んでいるんだから、仲良くしなはれと間に人があって二人は、ヨハネスが行きつけの「赤いハリネズミ」で会食をすることになりました。そこで二人とも肉団子が好物だとわかり、そのときブルックナーが「ブラームス博士! この店の肉団子は我々の共通点ですな!」と言ったそうです。※1
食べ物で仲良くなるところとその店の名前が「赤いハリネズミ」!かわいい。
「美しく青いドナウ」のヨハン・シュトラウス2世と仲が良かったのですが、二人で写真を撮るとそれについて「写真が出来上がったら、また僕がひどい服を着ていると笑われるんだ。シュトラウスはあんなに歳を食っているのにいまだに伊達男だ。なんて奴だ!僕だっていい加減な服装ではなかったよ。ラフな夏用ハンティング・シャツさ」と語ったと言われています。かわいい。
ブラームスは、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーやクロード・アシル・ドビュッシーに比べて、「比較的まっとうな」人格であるように見えます。自殺させたり、自殺しようとしたり、略奪したり、されりというエピソードは見られません。クララ・シューマンとの抑制の効いた関係くらいがかすかなスキャンダルがないように見えます。 それが故に、面白みに欠ける印象を抱きそうになりますが、幾人かの指揮者たちによる交響曲第1番ハ短調を聴き比べていると、コンベンショナルに見えて奥底の方にある情熱というか、抑制の効いた人となりながらに持つ情熱が暖炉の火のように、じんわり染み入ってくるものがあります。それが大変おもしろい。誰のためにでもなく、自分のために交響曲を聞こうと思うとき、ブラームスを静かに聴いてみたく思いました。
以下、youtube上にあった著名な指揮者たちによる交響曲第1番を紹介しておきます。
小澤征爾
レナード・バーンスタイン
ヘルベルト・フォン・カラヤン
パーヴォ・ヤルヴィ
参照