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2019/11/15
【良いモノ・アーカイブ】No.12 香水・キャンドル Diptyque/ディプティック
筆者:大田忍
写真は、今年新発売されたオーデパルファンのオーデミント。75mlで¥22,140(税込)。

文殊のセレンディピティ? 三人集まって自然発生した香りのブランド
ディプティック(diptyque)

内容
•概要
•歴史
•名前の由来
•楕円の由来
•ロゴ
•香りの掛け算

•主な製品と価格

•まとめ
•参照

概要

ディプティックのキャンドルを誰かのうちで見かけると少しうれしい。それが複数焚かれると「あ、詳しい人なんだ」と畏敬する。
フランスのパリのサンジェルマン通り34番地で始まったフレグランスキャンドルと、香水のブランド。

歴史

その始まりは1961年のパリ。
ときのフランス大統領は、シャルル・ド・ゴール(Charles de Gaulle)。
インテリアデザイナーのクリスチャンヌ・ゴトロー(Christiane Gautrot/女性)、画家のデスモンド・ノックス・リート(Desmond Knox-Leet/男性)、舞台装飾家のイヴ・クスロン(Yves Coueslant/男性)が、3人集まってブティックをサン・ジェルマン大通り34番地にオープンさせます。
この住所は、香水やキャンドルのデザインのフレームに記されています。
最初は、プリント記事や壁紙のデザインを展示するための場所でした。
3人は、旅好きで、旅先で出会った素敵な品々をブティックに持ち帰り、陳列、販売するようになります。役に立つかわからないけれど、いつか役に立ちそうなものを集めることを「セレンディピティ(Serendipity)」と言います。そんなセレンディピティに導かれるように集めた品々が、世界各国から集められたそのブティックは、「マルシャン・ド・リヤン(何でもないものを売る店)」と呼ばれていました。
創業当時のディプティクのファサード
現在サンジェルマン通り34番地
(出典:Google map

1963年 フレグランスキャンドルを発売

最初のフレグランスキャンドルは、ブティックをオープンしてから2年後に発売。顧客の一人が、
「香りのついたキャンドルが欲しい」と口にしたのがきっかけでした。
その時のキャンドルが「オベピン(Aubepine)」
オベピンとは、バラの先祖で、5枚の花弁を持った野生の花。3人の自然への畏敬の念が表現されています。
販売価格:8,690円(税込)
(出典:GPP)

1968年 ディプティクは、初めての香水「L’Eau」を販売(「香り付きの水に続き」とある)。※2

フレグランスキャンドルを世に出してから5年後に、オードトワレの「ロー(L’Eau)」を販売。デズモンドが好きなポマンダーとポプリからインスパイヤされてつくれました。
ポマンダーとは、柑橘の香りをつけた香玉。
ポプリとは、匂いの良い花やハーブを乾燥させて混ぜ合わせたもの。
L’EAU(ロー)
(出典:CYAN ※1)

2005年 ディプティクは、ロンドンのManzanita Capitalに買収される。

名前の由来

「ディプティク」とは、古代ローマの二つ折りの習字版や二連祭壇面などを意味する言葉です。
ブティックのエントラスには、左右のショーウィンドウがあり、そこからインスパイヤされてつけた名前でした。

楕円の由来

ディプティクと言えばなシグニチャになっているのが楕円形のラベル。
19世紀のメダイヨン(アクセサリーの一種で写真などをいれて首から下げるペンダント)をモチーフにしています。デスモンドがデザインしたテキスタイル「ブレトリヤン」にそのルーツを観ることができます。

オードトワレとオードパルファムの違い

香水に少し疎いと違いがよくわからなくなるこれらの違い。少しまとめておきます。

オードパルファム

濃度が10–15%で持続時間が5—7時間。
eau de parfum。EDPとも書く。

オードトワレ

濃度5—10%で持続時間が3—4時間。
eau de toilette。EDTとも書く。

ロゴ

ディプティックのベースになっているのは、おそらく
オランダ、ゴーダ出身のJan van Krimpenと1990年に設立されたオランダのDutch Type LibraryのFrank Bloklandにより2002年にデザインされた書体です。
そのままではなく、ハネの部分など、幾分シャープに修正されています。
書体の分類としては、オールドローマン体。
15世紀から18世紀にかけて、イタリア、フランス、オランダと広がり、最後にイギリスにまで及びました。
フランスでは、より洗練され、オランダでは、無骨な力強いデザインにアレンジされ「ダッチ・オールド・ローマン」と呼ばれるデザインになっていきました。
diptyqueのこのロゴは、フランスでデザインされたオールドローマンとして有名なGaramondに近い。
parisも含め、すべて小文字で表記され、女性らしさというか柔らかさが表現されています。それでいて、小文字のtの上部、uやeの最後のハネなどシャープになっています。
そしてdiptyqueに対して、parisは開き気味。
diptyqueは、キャンドルのパッケージ側面を観ると、欧文組版的にはかなりアウトな両端揃えを文字間で調節されてしまっています。本来欧文は、単語間で間隔を調節すべき。その他のオードトワレの表記などを観ても、文字の組版は、あまり良くなく、その辺は、とても脇が甘い。欧文ルールのリテラシーはちょっと低めのようです。
ディプティクは、戦略的に、または意図的にフレグランスのブランドになったというよりは、自然発生的にフレグランスブランドになったブランド。商品のラベルデザインなどもデスモンドのスケッチやレタリングから生まれています。
そんな流れもあって、ブランドが全体的に「感性」で成り立っています。そのあたりのニュアンスが、欧文ルールに対してのゆるさにも出ているのかもしれません。

香りの掛け算

店頭でもスタッフの方にオススメされますが、ディプティクは、キャンドルやフレグランスを掛け算して楽しむことができます。
2つのキャンドルを同時に焚いて、世界の広がりを楽しむことができます。

主な製品と価格

(写真および価格は、GPP公式販売サイトより)

キャンドル

DIPTYQUE(ディプティック)キャンドル ベ(BAIES)
販売価格:8,690円(税込)

オードパルファム

DIPTYQUE(ディプティック)オードパルファン 75ml タムダオ(TAM DAO)
販売価格:22,550円(税込)

オードトワレ

DIPTYQUE(ディプティック) オードトワレ ロー ド ネロリ 100ml

販売価格:18,480円(税込)

余談

フレグランスの Philosykos と Ofresia は、フランスのパフューマー、Olivia Giacobettiによって作られた。

まとめ

ディプティクは、その香りの作り方も、ブティックの成り立ちと同じように3人の「セレンディピティ」に基づいています。それぞれの子供時代や好きなバカンス先で出会ったもの、チャイコフスキーの家を訪れたときに見かけたヴィネグルトワレ(お酢由来のトワレ)など。それがゆえか、そこはかとない個人的な親しみを感じる香りです。商業的なプロダクトというより「好きなものを集めたら生まれた」という出自の気配を感じます。
そんなヘリテージ(遺産)を自分たちの生活に取り入れるというのは、とても豊かなものだと感じます。
男女をあまり明確にわけない、常識や型にもとらわれない、ふわっとしたディプティク。その香りに、身につけたり、部屋で焚いたりすることで、気持ちが豊かになると同時に、世界の広がりも感じることができるでしょう。
まるで、三人がいたるところに旅することで世界を広げたように。

参照