BRANDING TAILOR

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2019/11/19
【良いモノ・アーカイブ】良いモノとは何か?
筆者:大田忍

「良いモノを知らずして良いモノは作れない」

わたしは、グラフィックデザインから始まり、ブランディングコンサルタントを事業の中心にして会社を経営していますが、他社の経営や事業をみながら、自分を振り返って思うことがあります。
実力を損なわない、むしろプロモートするアウトプットを形成していくことが、実質的なブランディングの機能なんですが、それを機能させるには、コピー可能なメソッドにしていく必要があります。
つまるところ営業利益を上げることに貢献しないといけない。その考え方は変わらないのですが……
このとき、言語化できないもの、コピーできないものの中に重要なものが含まれているということを忘れてはいけない
ということをいつも忘れかけては思い出します。
禅問答のようですが、営業利益をあげるためには金より大事なものにフォーカスすべき、ということです。
恋愛をするときに「誰かに好かれることより」「自分が楽しくいきること」のほうが大切なように。
このあたりは、ロジカルにはきれいに描けません。
わたしは、シンプルなものを志向しますし、オイラーの公式にぞくぞくします。
しかし、ロゴスから抜け落ちるものとは何かを体感していたい、とも思います。つまるところ、ロゴスを手に持ちながら風の歌を聞くようなことです。
さて、前置きがずいぶん広がりすぎましたが、弊社のブログで、毎日用に「良いモノ・アーカイブ」を更新しています。
書きながら、ふと思ったのですが、「良いモノとは何か?」と。

そうそう、それ以前にまず、以下のように考えています。

「良いモノを知らずして良いモノは作れない」

想像には想像力が必要ですが、それを支えるのは知識と経験です。
寒くなる季節に色づく木々の点描のような紅葉をみて、琥珀を想起するには、紅葉も琥珀も知っている必要があります。その2つを結びつけるときにささやかな創造が発生します。たとえばフィクションで高級なレストランでの食事のシーンがあったとします。そのとき、高級なレストランという場をある程度しらなければ、そこで発生しうるさまざまな逸話を描けないし、どうしても瑕疵が生まれます。例えば、ドラマでリッチな人たちが、ワインを注ぎ飲みそれを堪能するというシーンのとき、良いワイン、良いグラス、理想の飲み方を知らずして描こうとするとひと目見て高級ではないワインとグラスだとわかるものを使ってしまいがちですし、もちろん飲み方にも現実との齟齬が生まれてしまいがちです。
では、実際にリッチじゃないとリッチな生活を描写できないのか、ポーランドで住まずにしてポーランドでの日々を描くこと能わずか、といえば、もしそうなら作家や脚本家の創造力は、現実の力の配下に下ることになります。だからリッチであることを知ろうとするはずです、ポーランドとはどういう地域か知ろうとするはずです。未来の日々を描こうとするならば、過去から現在までの技術や科学の歩みを調べることでしょう。そうして質の高い創造が生まれます。
だから
「良いモノを所有せずに」ではないく「良いモノを知らずして」
です。
では「良いモノ」とは何か?

良いモノとはなにか?

その定義をせずして、この活動や探求を続けることはできません。したとしてもその集積(アーカイブ)の価値は、とても弱くなります。
しかしいっぱい考えたうえで暫定的に設けた「良いモノ」の定義はずいぶんとゆるいそうなものになりました。こうです。
「日々の生活をより心地よくしてくれる所有可能なもの」
所有とは、だいたい「購入」と近い。たとえば『ピーナッツ』に出てくるライナスの毛布。ライナスにとっては、その毛布は「日々の生活をより心地よくしてくれるもの」でしょう。ただし、わたしたちは、ライナスにとって同じように価値を有した「ライナスの毛布」を購入することはできません。所有することもできません。たとえライナスから奪っても、ライナスにとって「日々の生活をより心地よくしてくれるもの」だったその毛布は、奪ったものにとっては、ライナスの匂いがする擦り切れて薄汚れた布切れに変質してしまいます。これは、わたしたちの定義する「良いモノ」には相当しません。わたしは、欲しいですが(笑)。
でも、ペンドルトンのブランケットなら購入できます。
重くて、可愛らしく、暖かく、ネイティブアメリカンのためにデザインされた装飾を持つペンドルトンのブランケットは購入して所有できます。そして、日々それを使いながら、所有する以前より「より心地よく」なっています。きっと。だから「良いモノ」です。
ただし、じつのところ、わたしたちは、所有により幸福になるようには作られていません。ベントレーを所有すれば、それすなわち幸福になるわけでも、心地よくなることが保障されるわけでもありません。ベントレーの良さに良かれ、それをもとめ所有したのならば別でしょう。日々、ベントレーに乗るたびに「より心地よい」と感じるかも知れません。
おもうにですが、所有そのものより、所有を通して、自分の好きなものを具体的に感じ楽しむことが「心地よさ」を生み出しているのかも知れません。
さて、ブランディングの会社が、良いモノをアーカイブしていくわけですから、かっこした目論見もあります。それは複数あります。

目論見

  • 良いモノを創造するための経験と知識
  • 企業や人をブランディングするときのツール
  • 楽しむ
最後のひとつは個人的なものです。良いモノを知るということそのものが純粋に楽しい。
「フリッツ・ハンセンってそんなブランドだったのか!?」
「ルイス・ポールセンってこんなにいろんなデザイナーがデザインしていたのか!?」
「え!?ルイス・ポールセンでデザインしていたあの人、フロスでもデザインしているの?」
という感じで、知れば知るほどに楽しい発見があります。
そしてそれらのブランドのロゴについても同時に調べています。
これを続けていくとマークの歴史、書体の歴史にも通じます。
そんなことに精通した企業の提案って素敵なものになりそうな気がしませんか?(宣伝)
余談:
良いモノ・アーカイブを書き始めてからは、街を歩くのも雑誌を読むのも以前よりずっと楽しくなりました。ポルシェを見かけては、ポルシェ博士や車種別の売上の違いを思い出したります。
ディプティクの香水を身に着けては、まずオードトワレとオードパルファンの違いを思い出し、またディプティクの起源のおもしろさを思い出します。
正直に言えば、この世界の広がり方をただただ楽しんでいます。
No.100くらいになったときに何かの繋がり(スティーブ・ジョブズが言うところのドットとドットを結べるのはあとになってからってあれみたいなやつ)が見えてくるかもと思うとそれも楽しみです。
余談2:
逆に「良くないモノ」は何か、というとそれは「日々の生活をより心地悪くするもの」です。
わたしにとっては多くのテレビ番組がそれに近いです(購入できないので。ちょっと違いますが)。
ぱっと見回しましたが、それに該当しそうなものはありませんでした。
ただ単純にものの量はもっと減らしたい。量は「より心地悪くするもの」に近いです。