
朝鮮から輸入し、日本の肥前国で発達した工芸が、東インド会社を経由しヨーロッパへ。そしてまた日本に来た、デンマーク発のコバルトブルーの陶磁器ブランド
内容
•概要
•歴史
•ロゴ
概要
ロイヤルは「王室御用達」というかデンマーク王室が株を買い占めて「王立」になった名残り。1773年創業。意外にも日本の影響を受けていました。
日本からの影響とは「伊万里焼」の染め付け。伊万里焼(いまりやき)は、佐賀県および長崎県にあった肥前国(ひぜんのくに)で生産されてた磁器。その積み出しが、伊万里の港だったので、「伊万里焼」と呼ばれるようになりました。
伊万里焼がどうしてデンマークに?
デンマークと日本は、1867年に修好通商航海条約が結ばれ、2017年に外交関係樹立150周年を迎えました。しかしロイヤルコペンハーゲンの創業は1773年。外交樹立前からどうして伊万里焼を知り、その影響を受けたのか?
元は同じ。有田焼は元来、朝鮮半島から連れ帰った陶工たちが佐賀で陶器を作るようになり、それから柿右衛門らが絵を描くようになって(染め付け)さらに進化し、有田焼として有名になっていきました。これが17世紀後半になって東インド会社が、買い付けるようになります。やがてそれがドイツの名窯マイセンの創立に至るほどの影響を及ぼす結果になりました。このような経緯で、江戸時代の有田焼が遠いヨーロッパへ影響を及ぼし、ロイヤルコペンハーゲンに強い影響を及ぼす結果になりました。
伊万里焼と有田焼の違いは何か
この東インド会社への輸出をする際、港に伊万里地区が使われた結果、有田焼は「伊万里焼」と呼ばれるようになりました。なので元は同じ。それから陸路でも国内で出回るようになり、伊万里地区のものは「伊万里焼」、有田地区のものは「有田焼」と呼ばれ、区分けされるようになりました。
そんな流れでロイヤルコペンハーゲンの絵付けはすべて手描き
日本の伊万里焼の影響で、ロイヤルコペンハーゲンは絵付けは手描きなんですね。製品の裏側には、
- ロイヤルコペンハーゲンのマーク
- アーティストのサイン
- シェーブナンバー
の3つが記されています。
ちなみに日本だけでなく、中国の陶磁器にも影響を受けています。青と白の色使いはその影響です。
歴史
1773年 Frantz Heinrich Müller(フランツ・ヘンリック・ミュラー)がデンマークで初の硬質磁器を完成させます。
ちなみに磁器と陶器の違いは、磁器は石の粉に粘土を混ぜて作られる石物で、陶器は粘土を材料とした土物。
1775年にクリスチャン7世国王とユリアナ・マリア王太后が援助し「ロイヤルコペンハーゲン」王室御用達窯となります。
それから4年後の1779ね、ユリアナ・マリア王太后が、ドイツのマイセンより技術者を集めて、ロイヤルコペンハーゲンの株を買い占め、「王立デンマーク磁器製陶所」になります。
1790年代に「フローラ・ダニカ」を世に出します。
フローラダニカとは
3000点以上に及ぶ植物を納めた植物図鑑。1761年から1883年に間にデンマークで作り続けれたもの。
この図鑑にある植物を一点一点選んで磁器に描かれたシリーズです。
1868年 王立企業の民営化にともなって、ロイヤルコペンハーゲンは再び民間企業になります。
2012年 あのフィンランドのコンシューマー製品メーカー、フィスカースに買収されます。
「あの」とつけたのは、ウェッジウッド、イッタラ、アラビアも傘下に収めるメーカーだから。フィスカースも歴史が古く、1649年創業の企業です。
関連
ロイヤルコペンハーゲンのコバルトブルー
コバルトブルーのブランドカラーであるブルーの顔料は、コバルト亜鉛シリカ。
今は、コペンハーゲンじゃなくって……
現在は、タイで生産されています。
主な製品と価格
画像および価格は、公式サイトより。
イヤープレート
1908年から初めて毎年出されるシリーズ。
イヤープレート 2020年版 “CHURCH OF OUR LADY”
13200円(税込)
イヤープレート(バックナンバー)
イヤープレートにはバックナンバーも用意されています。
イヤープレート 1908年版 / 明治41年
154万円(税込)
ブルーフルーテッド
プレート(27cm)
6600円(税込)
ブルーフルーテッドフルレース
ブルーフルーテッド(Blue Fluted)は、1775年に制作されたディナーサービス。絵柄の起源は中国。
ブルーフルーテッドには、プレイン、フルレース、ハーフレースがあります。
まずプレインが基礎になっており、これにデザインが加えられてフルレースが誕生。それからハーフレースが作られました。
プレート(27cm)
49500円(税込)
ホワイトフルーテッド
地模様はデンマーク語で“Musselmalet”と呼ばれており、(Musselはムール貝)二枚貝をモチーフとしたエンボス模様がその由来。
フィギュリン
1898年のパリ万国博覧会で最初に世に出ました。接合部分がわからないように仕上げられています。
日本の干支にちなんだイヤーフィギュリンもあります。
イヤーフィギュリン 2019 “ヘッジホッグ”
11,000円(税込)
アニュアルサンタ・アニュアルクリスマスツリー
それぞれ
11000円(税込)
参照
ロゴ

(出典:公式サイトより)
書体はBodoni No. 1 SB。
3本の波線は、デンマークを囲む3つの海峡、大スンド海峡、大ベルト海峡、小ベルト海峡。王冠は、もちろん王室御用達を意味しています。
まとめ
日本から遠い北欧の伝統的なテーブルウェアの由来が、中国や日本であるところの「回り回っての邂逅」感が、なんとなく嬉しいロイヤルコペンハーゲンの青と模様。伊万里焼が東インド会社を経由してヨーロッパ諸国にたどり着き、そこでから別のブランドが花開き、マイセンやロイヤルコペンハーゲンが生まれたという物語には、時の流れを含んで心動かすものがあります。
また名前にも含まれる「コペンハーゲン」は、ちょっとめずらしい首都で、大陸部分に領土をもつのに、島(シェラン島)に首都があるのは、デンマーク以外には、赤道ギニアのみ。
そんな北欧のパリとも呼ばれる首都の名がついた元「王立」の名窯(めいよう)が、今、タイで生産しているのも、面白い流れです。グローバリゼーションと歴史あるブランドの融合した結果、どこに流れていくのか、大変興味深く、また同時に警鐘のようなものも聞こえてくる気がします。