認知バイアスとは、人間が進化の過程で獲得してきた「なんとなくこうやったほうが生き延びやすい」という工夫が、具合悪く現れてしまうバグのようなもの。認知バイアスがどういうものか知っておくとこのバグを避けられたり、利用できたりします。今回紹介するのは、認知バイアス大全の№008の「コントロール幻想」です。
英語だと「llusion of Control」または「llusion of Control Bias」と表現されています。コントロール幻想とは、
自分がコントロールできない現象に、自分が影響を及ぼしていると思い込む錯覚
です。
認知の歪みである「個人化 (persionalization)」もこれに相当します。
個人化とは、
自分がコントロールできないような結果が起こった時、それを自分の個人的責任として帰属させること
です。ギャンブルや超常現象についての信じ込むときに、このコントロール幻想が関わってくることが多い。楽天主義と同様に前向きな錯覚です。
雨男や晴れ女などもこれに相当します。実際には自分とは関係のない現象を、自分がコントロールしていると錯覚する。お祈りも、ある意味コントロール幻想の一種です。
投資家が株式投資などで予想が的中したと思うとき、それが偶然である可能性を考えずに、結果を自分の予想力の高さを保証するものだとかんじるときにもこのコントロール幻想が関わっていると考えられます。
ジンクスもコントロール幻想に関わるものと言えます。
コントロール幻想は4つの要因が働いて形成されます。
(1)選択機会
自分で選ぶと、制御・コントロールできると感じます。ロト6など自分で数字を選ぶ宝くじなどがこれが該当します。自分で数字を選んでも、予め番号を振られた宝くじを買おうと当たる確率は同じです。
(2)関与
自ら関与することで、コントロールできると感じます。与えられた宝くじより自分で店を選んで買った宝くじのほうが当たる気がします。エレン・ラガーの研究によると、人々には高い数字が必要なときは強く投げ、小さい数字が必要なときは柔らかく投げる傾向がありました。
(3)親近性
自分の近くにあるもののほうが、コントロールできると感じます。
(4)競争
研究しているほど宝くじに当たる確率が高いと感じます。
コントロール幻想は、ハーバード大学の心理学者のエレン・ランガー(Ellen Langer )によって名づけられ、多くの異なる状況で再現されています。
Ellen Langer
By PopTech – https://flickr.com/photos/poptech/10468577176/in/photolist-4pi5xo-gX2DFK-gX2DJF-gX2DGW-gX2DwX-4o2wc4-gX3CQH-gX2DpH-gX2FVU-gX2FVA-gX2GdQ-gX5cgW-MCBtZS, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=84595546
コントロール幻想は、仕事や努力の継続に前向きな影響を及ぼします。が、健全な意思決定の助けにはならないようです。(※1)
コントロール幻想には、自己効力感(わたしは「うまくやれている!」という気持ち)を作り出す力はあるのですが、それが適切な判断に役立つわけではないようです。
なので、コントロール幻想ということを知っておいて、自分や組織、他者が、事象にどれほど関与しているのか、していないのかという判断をするときに、客観的になる力を増やす、というのがコントロール幻想の知識の使い方になりそうです。
「雨女」とか「晴れ男」という言葉が使われるとき、宝くじの当たりが出た!という看板のある宝くじ売り場をみたときに、コントロール幻想を思い出すということを繰り返すと無駄な努力(祈る)をするよりも、効果がより期待できる努力(統計的分析や宝くじなどのギャンブルなら期待値を知ろうとすることなど)をするになるのではないかと思います。
期待値についてはこちらを参照ください。
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※1:Trading on illusions: Unrealistic perceptions of control and trading performance
https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1348/096317903321208880