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2021/06/24
自分は優れているという思い込みの弊害 「優越の錯覚」
筆者:-

賢者たちがたしなめる根拠のなさすぎる自信

シェイクスピアが『お気に召すまま』でこんなセリフを書いています。

「愚か者は自分が賢いと思っているが、賢い者は自分が愚か者であることを知っている」

ソクラテスや孔子も同じようなことを言っていますが、2000年以上の歴史のなかで、このような言葉よく口にされ、且つ残っていることには注目したいものです。実力と乖離しすぎた自信には、どうも弊害があるようです。この実際以上に自分を優れていると思い込むことを「優越の錯覚」といいます。

優越の錯覚

優越の錯覚(Illusory superiority)とは

自分の資質を過大評価し、他者の資質を過少評価する傾向

です。認知バイアスのひとつ。自分に関する肯定的な錯覚です。「優越の錯覚」という言葉は、1991年に研究者のVan YperenとBuunkによって初めて使用されました(※2)。このバイアスは、「平均以上の効果(the above-average effect)」、「優越バイアス( the superiority bias)」、「寛大さの誤り(the leniency error)」などとも呼ばれています。また、街の子どもたち全員が、平均以上である架空の街にちなんで「レイク・ウォベゴン効果(the Lake Wobegon effect)」とも呼ばれています(※5)。

この優越の錯覚に関する研究のほとんどが、アメリカ人を対象としたものです。他の国々における自尊心を調査した研究から、優越の錯覚は、文化によることが示唆されています。 東アジア人は、他者との関係を良好にするために、自分の能力を過小評価する傾向があるという研究もあります(※3、※4)。

高い自尊心を持つ人は、「優越の錯覚」に陥りにくい

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高すぎる自尊心と優越の錯覚には、関連があるかもしれないのですが、適度な自尊心を持つ人ほど、優越の錯覚には陥りにくいようです。適度な自尊心は、成長と学習に情熱を注ぐ傾向があり、その気質と優越の錯覚は相容れないようです(※6)。

「優越の錯覚」は、メンタルに良いかもだけど、対人関係を悪化させちゃう

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テイラーとブラウンらは、精神的に健康な人たちには、つぎの3つの認知バイアスがみられると考察していました(※7)。「優越の錯覚」、「楽観主義バイアス」、「コントロール幻想」。しかし、ある縦断的研究によれば、自己強化バイアスは、主観的な幸福を形成する一方で、対人関係において問題を起こすことを示しました(※8)。

「優越の錯覚」についての言及

孔子
「本当の知識とは、自分の無知の程度を知ることである」
“Real knowledge is to know the extent of one’s ignorance”.

ソクラテス
「自分は何も完全には理解していないと感じているにもかかわらず、何も知らないことを自覚していることが賢明である」
He said that he was wise despite feeling that he did not fully understand anything, as the wisdom of being aware that he knew nothing.

ウィリアム・シェイクスピア
「愚か者は自分が賢いと思っているが、賢い者は自分が愚か者であることを知っている」『お気に召すまま』
“The fool doth think he is wise, but the wise man knows himself to be a fool”

チャールズ・ダーウィン
「無知は知識よりも頻繁に自信を生む」
“Ignorance more frequently begets confidence than does knowledge”

哲学者・数学者、バートランド・ラッセル
「現代の痛ましいことのひとつは、確信を感じている人は愚かであり、想像力や理解力のある人は、疑念や優柔不断さで満たされていることだ」
One of the painful things about our time is that those who feel certainty are stupid, and those with any imagination and understanding are filled with doubt and indecision.”

対策・応用

自信にブレーキ「も」備え付ける

楽観主義バイアスでも触れましたが、楽観主義バイアスや「優越の錯覚」は、メンタルを向上させる側面を持っています。未来を楽しみにして、そのために努力する力も与えてくれます。その一方で、適切な自己評価ができないことで、他者と関係にトラブルが発生したりもします。

その点、ダニング=クルーガー効果を参照して、啓蒙の坂を意識しながら、自信と謙遜をうまく使って自分を駆り立てるのが、人生を満喫するのに有効です。「啓蒙の坂」とは、知識が増えると自信が失墜するのですが、そのあと知識が増えるごとに少しずつ自信が高まっていきます。この上昇を示すラインを「啓蒙の坂」といいます。

自信と実力には相関関係はないのですが、自信は努力する力と人生を楽しむ力を与えてくれます。しかし一方で自信と実力が乖離していくこともあるので、検証して、その結果を受け止める力も養いたいです。そうすることで、他者とのもうまくやりつつ、人生を楽しめるはずです。でも、これって、さきに触れた賢者たちの言葉そのものかもしれないですね。

関連した認知バイアス

•ダニング=クルーガー効果(Dunning–Kruger effect)
知識のない人ほど自分は能力があると思い込むという仮説。逆に、知識や能力の高い人は、周囲も自分と同じ程度の能力を持っていると思っているので、自分はまだまだだと感じるという。

•コントロール幻想 (Illusion of control)
実際には自分とは関係のない現象を、自分がコントロールしていると錯覚すること。(雨男など?)

•楽観主義バイアス(Optimism bias)
悪い事は自分には起きないと考える傾向。

認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。

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参照

※1:Illusory superiority

※2:Self-enhancement and Superiority Biases in Social Comparison

※3:Why we overestimate our competence

※4:Why Do Westerners Self-Enhance More than East Asians?

※5:The Better Angels of Our Nature

※6:A Nondefensive Personality: Autonomy and Control as Moderators of Defensive Coping and Self-Handicapping

※7:Overly positive self-evaluations and personality: negative implications for mental health.

※8:The why’s the limit: curtailing self-enhancement with explanatory introspection.

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