わたしたちは、無意識に人を何かしらのカテゴリーに分類し、そのカテゴリーが持つ特徴がその人にあるように思い込みます。リズム感のある黒人、理想的な体型の白人、おしとやかな女性、悪い政治家、偉そうな医者などなど。こういったステレオタイプな想起と当てはめを「暗黙バイアス」と呼びます。
暗黙バイアス(Implicit bias)とは
他者やある集団を記憶にあるカテゴリーに当てはめて捉えてしまう傾向
です。無意識バイアス(Unconscious bias)とも呼びます。「暗黙のバイアス」という言葉は、1995年に社会心理学者のMahzarin Banaji氏とTony Greenwald氏によって初めて作られました。彼らは、社会的行動は、無意識の連想や判断に大きく影響されるという「暗黙の社会的認知理論(theory of implicit social cognition)」を発表し、大きな反響を呼びました。この暗黙バイアスは、自動的に発生します。利用可能性ヒューリスティックや代表性ヒューリスティックに関連しており、人は外界を素早く理解するために、世界を単純化して捉えます。ヒューリスティックというのは手っ取り早く判断するという意味です。代表性というのは、「木」とはこういうものというイメージをまとめたもの。
利用可能性というのは、たとえば日本人が「黒人」について知っていることを記憶から思い出せるという意味です。ラッパー、ジャズ、ダンサーなどを想起して、黒人といえば、リズム感があるというイメージを形成するのは、この利用可能性ヒューリスティックや代表性ヒューリスティックなどによるものです。こうして、わたしたちは、無意識に、他者を「らしい」という捉え方をしようとします。これが暗黙バイアスです。
こうした人や動物の外界を認知する構造は必要なものなのですが、行き過ぎると偏見を形成します。この偏見が形成されるのを避けるのが、この暗黙バイアスという知識の良い点です。
ステレオタイプに人を見るように自分はできていることを知る
認知バイアスあるあるですが、知ることが対策のひとつになります。暗黙バイアスは、差別とは異なりますが、差別を形成する元にはなりえます。重要な場面では、人を個人として見ることが必要になります。暗黙バイアスの弊害は、認知と実態の乖離です。たとえば、リズム感が良くない黒人に会ったとき、「黒人なのに」と思ってしまうことは、その人との関係を悪化させます。個人として見るならば、その人の特性を「曇りなき眼」で見ることができるようになるでしょう。ちなみに「曇りなき眼」とは、映画『もののけ姫』に出てくる言葉です。
•利用可能性ヒューリスティック(Availability heuristic)
認識、理解、決定の際に、思い出しやすい情報だけに基づいて判断する傾向。
•代表性ヒューリスティック(Representativeness heuristic)
あるものの代表的な特徴と合致しているならば、それに近いだろうと直感的に判断すること
•ステレオタイプのバイアス(Stereotypical bias)
民族や職業などを知ると、そのステレオタイプの影響で記憶が歪められる傾向
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。
スズキアキラのnoteでは、ビジネスに役立つエビデンスを紹介しています。おもしろい!と思っていただければ、なにとぞ「フォロー」や「いいね!」をお願いします。
※1:How Does Implicit Bias Influence Behavior?
#科学 #ビジネス #ビジネススキル #エグゼクティブ #経営者 #生産性 #オフィス #認知バイアス