プロダクト・プレイスメント(Product Placement)とは、映画などの劇中に製品や企業名を出演させる広告手法です。『007』シリーズに出てくるシャンパーニュのボランジェは有名で、1960年代にはドン・ペリニヨンとコントドシャンパーニュというテタンジェのシャンパーニュが登場していましたが、70年代以降は、ずっとボランジェです。しかもボランジェのプロダクト・プレイスメントは無料で契約を結んでいます(※1)。ちょっとすごいこと。最近では、エチケット(ワインのラベル)すら見えないこともあるのですが、007といえば、ボランジェという組み合わせはシャンパーニュ好きや007好きには浸透しています。しかし、今回は腕時計のアメリカのブランド、「Hamilton」(ハミルトン)にフォーカス。映画を見ているとすぐに出てきます。リーアム・ニーソンよりもブルース・ウィリスよりもダニエル・クレイグよりも映画に“出演”しているかもな腕時計です。どんな映画に、出演しているか見てみましょう。
そのまえに、このブログでは、デザインかアートの話をしていますが、プロダクト・プレイスメントのどこがデザインなのか、について軽く触れておきます。デザインではありません。これは、ブランディングの領域に入る話です。しかしブランディングを形成するためにグラフィックデザインが大きく関与しているので、ブランディングの話にまで話が及ぶため、このプロダクト・プレイスメントについて触れていきます。あとは、おもしろいから。
ハミルトンは、1874年創業のアメリカ発祥の腕時計ブランドですが、現在はスウォッチグループの傘下に入っています。ミリタリーウォッチから宝飾腕時計まで多岐にわたるラインがあり、ラグジュアリーブランドのカテゴリじゃないはずなんですが、そんなに安くもないです。ハミルトンといえば、プロダクト・プレイスメントというほど、昔から映画に製品が出演しています。
1966年、スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』で、小道具に使う腕時計の製作をハミルトンが依頼されています。ゆえにこれは、プロダクト・プレイスメントと言い難いかもですが、そのあとに記念モデルが製作されています。
クリストファー・ノーラン監督の2014年の映画『インターステラー』では(でも!)かなり重要な役回りを演じたのがハミルトンの時計。この映画では、主人公のクーパーが帰らぬ宇宙への旅を前にして娘に腕時計渡しますが、その腕時計がハミルトンです。
リーアム・ニーソン主演、ジャウム・コレット=セラ監督のサスペンス映画『トレイン・ミッション(The Commuter)』でも、なかなかおもしろい使われかたをしています。リーアム・ニーソンがハミルトンの腕時計をしているのですが、リッチな証券マンに「している腕時計を見れば、どの程度の収入かわかるぜ」と揶揄されるんです。そんな広告の仕方あるか!?と思うも、ハミルトンは映画出演の小道具(Prop)としては、かなり真摯で広告的効果よりも映画の完成度を優先する姿勢を持っています。
映画、『メン・イン・ブラック』シリーズには、ハミルトンのVeturaが、登場しています。知る人ぞ、「あ!ベンチュラだ!」と嬉しくなる登場の仕方をしています。
またもやクリストファー・ノーラン監督の映画で2020年公開の『テネット』。非常に重要な役割で、ハミルトンの腕時計が出てきます。限定で販売されていましたが、あのデジタル表示は無いんですよ。残念!
これだけじゃなくて、主人公は劇中で別のハミルトンもしています。
ほかにも、『クリフハンガー』(1993)、『ダイハード』(2013)、『S.W.A.T』(2013)、『グリーンランド』(2020)、『オーシャンイレブン』(2001)、『アメリカン・アサシン』(2017)、『007 慰めの報酬』(2008)、『96時間レクイエム』(2014)、『ザ・ターミナル』(2004)、『オデッセイ』(2005)(※テネットと同じやつ)などにハミルトンは登場します。
これは、ただの推測なんですが、タバコ産業は、表立ってはないにしろ、映画に多く出資しているのではないでしょうか。映画の劇中で格好良くタバコを吸うシーンがあればあるほど、タバコは売れるはずだからです。これに関して、調べていないので推測どまりなんですが。このように、わたしたちが気づかないところで、「良いイメージ」というものを形成され、ただ物語をおもしろおかしく見ているだけで、それが刷り込まれているってこともあったりします。映画をみているとこのプロダクト・プレイスメントが出てくるとストーリーとは別な部分で楽しんじゃったりします。それにしても、Khaki Navy BeLOWZERO欲しいなぁ。
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