BRANDING TAILOR

BLOG

2021/06/01
人は安全だと感じるとリスクを犯す 「リスク補償」
筆者:

 

交通事故が多発する場所に注意喚起する設備を設けたが……

交通事故が多発する場所に注意喚起する設備を設けました。そのおかげでしばらくのあいだ事故は減少しました。しかししばらくするとまた交通事故が多発し始めました。これはドライバーたちが注意喚起設備の設置により「安全になった(リスクが減った)」と感じ、安全になったためために再びリスクの高い運転をするようになったことが原因でした。これをリスク補償(Risk compensation)と言います。

リスク補償

リスク補償 (Risk compensation)

リスクが高い時は安全な行動をするが、安全になるとリスクの高い行動を取る傾向

このCompensationは「埋め合わせ」という意味で、せっかく減ったリスクが、リスキーな行動により埋まってしまうということを示しています。「リスク恒常性(ホメオスタシス)」とも呼ばれています。

自動ブレーキ機能が装備された車に乗ると……

画像1

アンチロック・ブレーキが装備されている自動車に乗るドライバーは、前方の車両に近づいて運転することが観察されています。またコンドーム配布キャンペーンを実施してもHIVの感染率が回復しなかったことがありました。これらはリスク補償によるものだと考えられます。

リスク補償は行動適応

人間は「最小努力の法則」というものがあります。使わないで済む労力を省エネしようとするもの。これは「行動適応(behavioral adaptation)」とも呼ばれ、環境に適応した反応です。「インターネットですぐに検索できる情報は記憶しようとしない効果」のグーグル効果もそんな行動適応のひとつです。

ペルツマン効果

シカゴ大学ブース・ビジネススクールの経済学教授サム・ペルツマン(Sam Peltzman)は、「リスク補償による相殺は、事実上完全であり、規制によって高速道路の死亡者数は減少していない」と1975年に示唆しています(※3)。ペルツマンのこの主張により、リスク補償は「ペルツマン効果」とも呼ばれています。

対策・応用

徒然草の中に『高名の木登り』という話があります。名高い木登りといわれる男が、人に指示をして、高い木に登らせて梢を切らせたところ、危なく見えているときには声をかけることもなく見ているのだけれど、あまり危なくないところまで降りてきたときに「気をつけろ!」と声をかけるという話です。理由を問われ、こう答えます。

「失敗は、簡単なところになって、必ず起こるものでございます」

ということで、「安全かも」と思うときにこそ、最大限の注意を払うというのが、リスク補償への対策です。

加えて気をつけたいのは、リスク補償は、他人にも影響するということです。安全だと思って危険な運転をする人がいることにも気をつけましょう。

認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。

関連した認知バイアス

•グーグル効果 (Google effect)
インターネットですぐに検索できる情報は記憶しようとしない効果

 

参照

※1:Risk compensation

※2:錯思「リスク補償」

※3: “The Effects of Automobile Safety Regulation”. Journal of Political Economy.

#科学 #ビジネス #ビジネススキル #エグゼクティブ #経営者 #生産性 #オフィス #認知バイアス #リスク補償