BRANDING TAILOR

BLOG

2021/06/01
人の命に価格をつけられるか問題 「スコープの無視」
筆者:

スコープの無視

スコープの無視(Scope neglect)とは

問題を扱うときに、その大きさに無頓着な傾向

例えば、2,000人の子供を救うために、20,000人の子供を救うために払えるお金を同じ金額を払えること。3人の生命を救うときに100人の生命を危険に晒してしまうのもこの規模の無視という認知バイアスの影響を受けています。この認知バイアスは、「スコープの鈍感さ(scope insensitivity)」とも呼ばれています。

渡り鳥が石油まみれになることは避けたいが規模までは考えられない

画像1

画像引用:By Marine Photobank – originally posted to Flickr as Oiled Bird – Black Sea Oil Spill 11/12/07, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8979514

ある研究では、屋根のない石油が噴出して溜まった池で渡り鳥が溺れてしまうのを避けるために、池を保護ネットで覆うことにいくら払うかを被験者たちに尋ねました。年間2,000羽、20,000羽、200,000羽の渡り鳥が影響を受けるという状況に対して被験者たちは平均して、それぞれ80ドル、78ドル、88ドルを支払うと回答しました(※1)。このように人は、問題を重要視しても、その規模には無頓着になってしまいます。

スコープの無視を説明した動画

対策・応用

スコープの無視は、思った以上に扱いが難しい認知バイアスです。なぜかというと倫理や感情的な影響があると人は、直感的な判断を優先し、合理的な判断ができなくなるからです。トロッコ問題(trolley problem)という有名な問題があります。「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という問題です。イギリスの哲学者、フィリッパ・ルース・フット(Philippa Ruth Foot)が提唱した問題です。

トロッコ問題

画像2

画像引用:McGeddon – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=52237245による

線路を走っていたトロッコの制御が不能になりました。このままでは前方で作業中だった5人が猛スピードのトロッコに轢かれて死んでしまいます。この時たまたまあなたは線路の分岐器のすぐにいます。あなたが、トロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かります。しかし、進路を変えた先にも1人が作業しており、進路を変えれると、5人は助かるが1人は死にます。さて、あなたは進路を変えるべきか否か。これがトロッコ問題。

合理的には5人を助けるために1人を犠牲にすべきです。これを功利主義(utilitarianism)と言います。しかし誰かの利益のために、誰かを犠牲にするのは良くないとも考えられます。これがスコープの無視を乗り越える難しさです。

さて対策ですが、それは

行動を決めておく

トロッコ問題であれば、「わたしなら5人を助け、1人を犠牲にする」と決めておくか「傍観する」と決めておくというのがトロッコ問題への対策です。1人が自分の大切な人かそうではない場合かも考慮しておくと有事の際に迷わなくて済みます。スコープの無視への対策もこれに近いものです。「人の命の価値を換算する」というのが対策です。実はこれ行政が日頃行っていることです。信号などの設置には費用がかかりますが、どの交差点に信号を設置し、どの交差点に設置しないかは、「事故のおきやすさ」を目安にしています。「どれくらい死ぬなら設置する」という規定が、信号などの設備の設置の要件になっています。詳しい価格は、イケル・ブラストランド の『もうダメかも――死ぬ確率の統計学』で紹介されています。

おすすめの本

もうダメかも――死ぬ確率の統計学 www.amazon.co.jp

3,960 (2021年06月01日 15:51時点 詳しくはこちら)
Amazon.co.jpで購入する

「マイクロモート」という興味深い単位がでてきます。MMと表記されるこれは、「100万分1で死ぬ確率」です。

認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。

フォローやいいね!をよろしくお願いします!

スズキアキラのnoteでは、ビジネスに役立つエビデンスを紹介しています。おもしろい!と思っていただければ、なにとぞ「フォロー」や「いいね!」をお願いします。

参照

※1: Measuring Non-Use Damages Using Contingent Valuation: An Experimental Evaluation of Accuracy

#科学 #ビジネス #ビジネススキル #エグゼクティブ #経営者 #生産性 #オフィス #認知バイアス #スコープの無視