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2021/03/25
「自分が知っていることは、相手も知っている」と思ってしまう呪い「知識の呪い」
筆者:

「リズムを鳴らす人」と「リズムを聴く人」の曲名当てクイズ

「ハッピーバースデー」のように誰もが知る曲を当てるゲームをした実験がありました。実験では二人ペアになって、1人は「リズムを鳴らす人」、1人は、「リズムを聴いて当てる人」です。リズムを鳴らす人たちは、平均50%くらいは、その曲を当てられるだろうと予想しました。しかし実際に当てられたのは2.5%程度でした。リズムで曲を当てるのはとても難しいのです。ただしその曲を知っている人は、リズムをとりながらリズムを聴いている人も、その曲を聴いているような感覚になるのです。

これは、1990年ごろのスタンフォード大学のElizabeth Newtonという学生が行った「Tapper and Listener」という実験でした。これは、「知識の呪い(The curse of knowledge)」と呼ばれています。

「知識の呪い」とは

知識の呪い(The curse of knowledge)とは、

自分の知っていることは、他の人も知っていると思い込む傾向

です。例えば学校の先生は、「これくらいはきっとわかるだろう」と考えて問題を設定しますが、このとき自分の知識をベースにして考えてしまいがちです。先生なのでもちろんその科目の知識を熟知しているわけですが、そのため、その知識がない人の感覚をうまく想像できなくなります。

これと同じことがビジネスの様々な場面で起こっています。説明をするときに相手も知っているだろうと考えて無意識に使う専門用語や略語の数々。デザイナーとクライアントの間にもよく発生します。

「知識の呪い」が発生しやすいのは教室

先生と生徒、教授と学生のあいだが、この「知識の呪い」が発生しやすい場面です。これは想像に難くありません。ついでビジネスシーン。異なる領域の専門家同士が交渉や会議をするさいに、無自覚に「自分の知っていることは相手も知っているだろう」と考えています。

「知識呪い」は、1989年に誕生した言葉

「知識の呪い」という言葉は、経済学者のコリン・キャメラー(Colin Camerer)、ジョージ・ルーヴェンスタイン(George Loewenstein)、マーティン・ウェーバー(Martin Weber)による1989年の『ジャーナル・オブ・ポリティカル・エコノミー(Journal of Political Economy)』の記事で造られました。

論拠

さきにあげたスタンフォード大学の大学院生エリザベスニュートンの実験の論文とそれを扱ったこハーバードビジネスレビューの記事はちら。

価格設定にも現れる「知識の呪い」

情報の非対称性と言うものが問題になってきます。それはどういうことかと言うと一方は情報について熟知しており、もう片方はその情報が不足している状態と言うことです。この状態で情報の豊富な方が価格を設定した場合、コストや手間暇や工夫がなされている商品の価格は高く設定されますが、受け手はその情報を知りません。

応用・対策

「知識の呪い」の弊害を減らすには、自らの盲点を第三者を使って検証すると言うプロセスを設定することです。自分の専門外の誰かに説明し、不明点を伺う、というのが確かな方法でしょう。その手間を省けないときは、自らの手でプレゼンテーションについて、何も知らない人間として接してみると言うことです。そこに専門用語は含まれていないか、自分が常識だと思っているが、多少は常識だと思わないであろう事事はないか、をチェックするだけでも知識の呪いが少し解けることでしょう。

まとめ

専門家がその場で自分1人である場合は、我々はこの知識の呪いに気づきやすいかもしれません。自分以外自分の持っている知識について知らないと言う認識があるからです。しかし自分と同じ知識を持っている仲間が多数いる場面となると自分の知識は「常識化」してしまいます。そこに第三者が来たときに、相手がその常識外の世界に入ると言うことを忘れがちになります。と言うことで、この知識の呪いが起こす弊害を想定できそうな場面では、タスクのプロセスの中に「知識の呪いがないかチェックする」と言うタスクを差し込むことが有効でしょう。

 

参照

#認知バイアス