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2021/03/28
スピードを上げても思ったより早く到着しない理由 「時間節約バイアス」
筆者:-

アクション映画のカーアクションで、急いでギリギリ間に合うシーンがよくあります。わたしたちも「急いでいるので今だけスピードだして間に合わせたい」と思ってスピードを出したくなる時があると思います。しかしすごく急いでいるわりに早く着かないんです。この「すごい急いだわりには早く着かない」という感覚と結果のギャップは、時間節約バイアスによるものです。

時間節約バイアスとは

時間節約バイアス (Time saving bias)とは、

高速を出しているときに、さらにスピードを出して節約できるであろうと思う時間を過大評価する傾向

です。逆に

低速で移動中にスピードアップしたときに節約できる時間を過小評価してしまうのも時間節約バイアスです。

これ計算するとわかるんですが、感覚的には、わからないんです。

論拠

スピードをあげたときに節約できる時間の計算式は、これなんですが、なんのこっちゃかわかりにくいです。

画像2

なのでちょっと計算してみましょう。50kmさきにある場所に到着する設定で、低速時と高速時から更に時速10kmスピードアップしたときに節約できる時間をそれぞれ時間を計算してみましょう。信号などない設定です。

低速のケース
時速30kmで走る場合から、さらに10kmスピードをあげて、時速40kmにした場合に節約できる時間を計算してみます。

時速30kmの場合、50km走るのに、(50km÷30km/h)=1.67時間かかります。時速40kmにすると、50km走るのに、(50km÷40km/h)=1.25時間かかります。その差、0.42時間。つまり、約25分節約できます

高速のケース
時速120kmで走る場合から、さらに10kmスピードをあげて、時速130kmにした場合に節約できる時間を計算してみます。

時速120kmの場合、50km走るのに、(50km÷120km/h)=0.42時間かかります。時速10kmスピードをあげて時速130kmにすると、50km走るのに、(50km÷130km/h)=0.38時間かかります。その差、0.04時間。つまり、約2分24秒節約できます

低速時には時速をさらに10kmあげるだけでけっこう時間が節約できるんですが、高速時は時速をさらに10kmあげてもわずかしか時間を節約できないんです。

実際に節約できる時間と感覚の差を検証した実験は、いくつかりますが、こちらがそのひとつです。

“Speeding and the time-saving bias: how drivers’ estimations of time saved in higher speed affects their choice of speed”(2010年)

このスピードをあげて節約できる時間はどのように推移していくかをグラフにしたのがこちらです。

画像1

Time savings from extra 10 mph decrease as speed increases
By Tbap – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=68762858

このグラフは時速10マイルあげることによって節約できる時間を示したものです。緑の線から時速10マイルスピード上げた場合節約できる時間が赤の線です。

応用・対処

この時間節約バイアスの知識って、運転するときくらいしか使えなさそうな気がしますが、さにあらず。人的資源を割当時にも、時間節約バイアスが発生していることが2011年、ストックホルム大学のオラ・スヴェンソンの研究でわかっています。(※1)

30人の従業員がいるところに10人の従業員を追加投入したときに上がる生産性と150人の従業員がいるところに10人の従業員を追加投入したときに上がる生産性への評価の感覚が、時間節約バイアスにみたように、母数の少ない場所に対しては過小評価し、多いところには過大評価してしまう傾向が人にはあるということです。

よってこの時間節約バイアスという知識をつかって、どんなアドバンテージが獲得できるかと言うと、ひとつには素直に自動車を運転中に高速で運転しているなら、さらにスピードをあげてもさほど時間が節約できないことを理解して、むやみやたらにスピードを出さなくなるだろうというもの。リスクだけが高くなりますから。

もうひとつは、スヴェンソンの研究によってわかったように人的資源の投入時にも、この時間節約バイアスが発生することを懸念して、ちゃんと計算してみる、ということをするようになるだろう、というのもアドバンテージになります。先のグラフのイメージを頭に一度いれておくと、たぶん意外な場面でも活用できる気がします。

生物学者の福岡伸一さんが、自分のことを信じないと何かの著書で述べていましたが、自分の感覚はこんなふうに間違えるので、計算するくせを着けておくと計画が辺に頓挫したり、怪我をしたりすることが減るでしょう。

236ある認知バイアス

認知バイアスとは、人間が「こうした方がうまくいく」という経験知を行動傾向にして獲得したもの(ヒューリスティクスと言います)が、裏目にでたものです。武器の欠点みたいなもの。これらのことを知っておくと怪我をしないばかりか、人生はビジネスにおいてうまく利用できたりすることも多くなります。こちらのマガジンで認知バイアスをまとめています。ちなみにこの時間節約バイアスは、236あるなかの№102。

 

参照

※1