BRANDING TAILOR

BLOG

2019/02/15
ロゴは何の役に立つのか
筆者:大田忍

企業や商品は、
どうしてロゴを設けているのだろうか。

ロゴが立派なら
企業は成長するのだろうか、
売上が上がるのだろうか、
存続する可能性が高まるのか。

またそもそも
ロゴが立派なのかどうか
どう判断するのか、という問題だって
整理する必要があるのですが、
これは別の機会にお話したいと思います。

ロゴが立派ではなくとも
業績の良い企業は多くあります。
ウェブサイトもろくにデザインせずに
更新もおろそかにしていてもです。

つまり
ブランディングなどせずとも
業績が好調な企業は多く存在している
ということです。

その一方で
大企業を始め、
トップランナーである企業の
多くは、ときおり
ロゴを変更します。

最近ではZARAが
ロゴを変更しました。(※1)
これが以前のロゴ。
こちらがBaron & Baronがデザインした、
新しいロゴ(2019)
新しいロゴの書体は、モダンローマン体といってファッション誌によく使われています(Vogueとか)。
以前のロゴよりも、文字の端にある線(セリフ)が「A」は直線になり、Zはカーブも含めて拡張されています。Rはモダンでエレガントな曲線があるものに変わっています。
高級でありつつ、攻めていて、今までにないカテゴリを創造していく、というニュアンスが見て取れます。
またZとRが前に出て見えて、2つのAが後ろに見え、平面のはずが、レイヤー(層)が見えてきたりします。

世界的に展開しているブランドが
ロゴを変えるというのは
経費の面からだけでも
コストが非常にかかります

ブランディングファームはどこも
料金が高いので、
制作にも結構なコストがかかり
看板、ウェブサイト、パンフ、アニュアルレポート、
そして全世界の社員たちの名刺!など
変更にももちろんコストがかかり、

その上、古いほうのロゴを
付けた商品は
前時代のものとして
あつかれるようになります。

にもかかわらず、
どうしてロゴを変えるのでしょうか。

ロゴは指標

ロゴを変えた企業の推移を観てみるとどうでしょう。

たとえばマスターカード

2つの丸の重なりでシンボルで
有名なクレジットカード会社である
マスターカードは、
2016年に企業ロゴを変更しました。

変更した理由は(※2)


“デジタル空間でも成功するものでなくてはいけない”

マスターカードの顧客体験とデザイン責任者であるシンディ・チャスティン
このように説明していました。

“マスターカードのブランディングは、
モダンで、デジタル化する世界に合うよう、最適化されたのです”

変更を嫌う(信頼が揺らぐから)
金融業界のなかで
にもかかわらずロゴを変更したは
クレジットカードが使われる場面が
リアルワールドから
デジタル上へ移行しつつある、
ことに対応した、
ということです。

雑誌「ワイヤード」曰く(※2)
“つまるところ企業は、
ビルボードからノートパソコンの画面上、
スマートウォッチ、携帯電話に至るまで、
どこで見ても見栄えがよいロゴを求めているのだ。”

結果、

1996年から使われていたこのロゴは
によって2016年に

このように変化しました。

シンプルで認知しやすく
洗練されています。

どのような環境でも、みやすくなったのはもちろん
デザインの潮流(これもまた別の機会に詳しくお話します)
を汲み、
そして「アップデートされた」
印象を与えます。

マスターカードが
ロゴが変えたのは


「この企業が市場の変化に対応した」

ことを示しています。

ロゴそのものが

理念や哲学を体現する以前に

企業の姿勢を見て取る指標に

なっているわけです。

おもしろいですね。

インディケーターとして
ロゴが機能しているわけです。

マスターカードは、
ロゴの変更に
膨大なコストを掛けてなお
”うちは、これから
バリバリデジタルの世界でも
やってきまっせ!”
という態度を
内外に示すことを

必要

だと感じたわけです。
ここに

ロゴが何の役に立つのか

の答えをみることができるのではないでしょうか。
もちろんこれは
世界的に認知がなされている
企業において
という枠組みの中での話です。
マスターカードの
新ロゴを手がけた
も、
“あらゆるブランドがこの種のミニマリズムを
使うことが許されているわけではない、と言っています(※2)
ミニマリズムが機能するためには、ある程度の規模が必要だ、と。”
ミニマリズムとは、
デザインの潮流に則したものでもありますが、

デザイン要素を削ぎ落として
洗練された記号に近づく(というか記号ですが)
思想です。

わかりやすい例で言えば、
アップル、ナイキ、マクドナルドです。
もうロゴタイプ(企業名を示す文字列)すら外して
リンゴマーク、スワッシュ、黄色いMの字、
だけになっています。

そして機能しています。

たしかにミニマリズムには規模が必要なようです。
しかし
ロゴが指標である
というのは、規模に
かかわらず、
有効な観方ではないでしょうか。

重要なのはロゴそのものではない

さきのマスターカードのロゴの変更から
見て取れるのは、
大事なのは、
変更されたロゴの有り様、
というよりは、

大金とリスクをかけて、変えた行動

ではないでしょうか。
もちろん具体としての
ロゴの有り様は重要です。
服飾ブランドのギャップは、
2010年にロゴを変更するも
不評がひどく、公表して6日で
新ロゴの使用を取りやめました。
それにともなった損失は100億円以上とも
言われています。
6日だけの寿命に終わったGapの新ロゴ(右)
話を戻して、
重要なのは
ロゴの有り様というよりは
そこに至った行動ということですが、
人はロゴを観て
その企業体が
どこに向かっているのか
見て取っているんですね。
その「人」には
顧客や投資家、
ステークホルダーも含めていますが、
同時に
「社員たち」も含まれています。
まさに
旗印として機能していることになります。
この機能を
使うか、使わないか
大事にするかしないか、
というのは、
さてどのあたりで
企業の命運に関わってくるのでしょうか。
それは企業のステージにもよりますし、
時代も大きく影響力をもっているでしょう。
2019年の現在、
これからは変化恐ろしく速い時代になります。
変えるべきもの
変えないでいるべきもの
を見極める目が
嵐のなかに突っ込んでいく
航海士のそれくらいに
重要になってくるでしょう。
“最も強いものが生き残るのではなく、
最も賢いものが生き延びるのでもない。
唯一生き残るのは、変化できるものである”
と言ったのは、ダーウィンでした。
ロゴは、
変化の激しい時代になって
一層に重要な指標になるかもしれません。
ちなみに
マスターカードは
ロゴを変更して以来、
業績がどうなったかというと

2016年
売上高        107億7600万ドル
営業利益        57億5100万ドル

2018年
売上高        149億5000万ドル
営業利益    72億8200万ドル
となっています。(※3)

一方でGapは
2010年移行も、
売上高は横ばいなんですが
自己資本比率が激減しています。

まとめ

1.ロゴは指標

2.生き残るには、変化が必須