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羊をめぐる冒険
村上 春樹

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  • ジャンル:
    小説・詩・エッセイ
  • 読了時間:
    1.5時間
  • 形態:
    Kindle
  • 読んだ人:
    大田忍
  • 評価:
    オススメ

彼は一人息子の写真でも見せるようににっこりと 微笑みながらワインのラベルを僕に向け、僕が 肯くと感じの良い小さな音を立てて栓を抜き、グラスにひとくち注いでくれた。凝縮された食費の味がした。

村上春樹の小説には、
メッセージがない。そして
生きている人がいない。

内田樹の『村上春樹にご用心』経由で
誰かの批評を読んだことがあります。

たしかにそうなのだろうと思います。
メッセージは、なく現実に生きている人が不在。

しかし、
綺麗に明確に
定義的に現実から
切り離されたフィクションは
わたしたちに、ここではない
別の場所を提供してくれます。

そこに逃げこんでも
私たちは、強くはなれません。

でも、逃げることはできる、
休むことはできる。
体力が戻ってくることはできる。
ちょっとした暖をとれたりはする。

激しい吹雪のなかの
山小屋のように。

加えて
世界も広げてくれます。知らない音楽、
知らない世界、
そして日常を文学的に
見るへんな視点も提供してくれます。

冒頭は高級なフランス料理店での
描写。ワインの味を「凝縮された食費」と
表現。

楽しい。

 

(2018/11/21)