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小保方晴子日記
小保方 晴子

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  • ジャンル:
    小説・詩・エッセイ
  • 読了時間:
    2.5時間
  • 形態:
    Kindle
  • 読んだ人:
    大田忍
  • 評価:
    オススメ

「わたしを含めて、自分はまともだと思っている人たちは
歴史的アホになりうるし、なっているかも
ってことを入れ墨に入れるくらいしっかり頭に叩き込んでおこう」
と思った。

 

私は、この本を読むまで、さして興味のないままに
小保方晴子さんのことを

「顕示欲が強くて、不正をしちゃって、それなり相応の批判を受けても致し方ないけれど、それにしてもバッシングは異常過ぎてちょっとかわいそうなひと」

と思っていた。

 

反省しても、成長しないので
それを理由に自分を責めないけれど
それでも

この本を読んですぐに、

わたしは、歴史に汚名を残すたぐいのアホだったんだな

と決定的に思ってしまった。

 

勘違いされたくないのですぐに断っておきたいのだけれど

小保方晴子さんが正しくて、なのに貶められていたことに気づかずにアホだった、
という、間違いが実は正しく、正しいと思っていたことが実は間違いだった、
という認識の逆転が理由ではない。

不確定な情報のまま、誰かを簡単に判断し、
その人が社会的に不正に(人殺しだって、あんなに強く継続的に、全面的に、非難されることなどなかったのではないか?)
糾弾されて、いじめられている状態を「当然のたぐいのこと」と思って放置していたこと

が決定的な間違いだった、ということだ。

 

この「日記」に感情移入して
ほだされて、味方に転換した、
というわけではないつもりでいる。

当事者の肉声に近い言葉を読んで

自分がどれほど無知だったのか

という事実だけは、間違いなく、私見なく、浮き彫りになってしまったのだ。

 

この日記を読んで思い出す話がいくつかある。

『夜と霧』、

消毒を発見したイグナッツ・ゼンメルワイス、

そして関東大震災朝鮮人虐殺事件。

 

『夜と霧』は、ユダヤ人の精神分析学者、ヴィクトール・E・フランクルが
ナチスの強制収容所での体験を綴った本。

地獄のなかで生き残る力と冷徹に環境を見る科学者的な視線を
私はこの本で知ったのだけれど、それに近いものを小保方晴子さんの日記で
追体験した。

辛くても食べて、辛くても、勉強・研究を求めた。
そして生き延びた。

最後に瀬戸内寂聴さんとの対談もある。
誰かが誰かを救うというのは、人間において大切な楔だ。

別の方からの言葉で、小保方さんに

「よく生きていてくれた」

とかけられたものがあったのだけれど

本当にそう思う。

 

そしてわたしたちは、

どうしてこうメディアというマスに左右され、
人に残酷になれるのだろう?という疑問が
相対的に強く浮き上がってくる。

 

そこで思い出されるのが

感染制御の父、イグナッツ・ゼンメルワイス

ゼンメルワイスは、産褥熱の原因が、

医師の手にある「何か」であると仮説し、

手を消毒することをそれが防げることを発見した。

しかし、他の医師たちは、

医師の手は神聖なものであり、それが患者を死に追いやる原因かもしれないという

その説を受け入れらず、ゼンメルワイスを糾弾します。

ゼンメルワイスの消毒で、死亡率が1/6以下に下がったのにもかかわらず。

結局、ゼンメルワイスはその後、神経衰弱になって死んでしまいます。

 

正しい者が、それを認めないものに糾弾される、アナロジーとして
ゼンメルワイスを思い出したのでなく、

糾弾する多数の人間、つまりほとんど社会が
何を糾弾するとき、アホになっているというアナロジーとして
ゼンメルワイスの生涯を思い出した。

 

もうひとつ思い出した、関東大震災朝鮮人虐殺事件

これも同じ理由です。

関東大震災のときに、混乱のさなか、
内務省が警察署に伝えた内容の中に

「混乱に乗じた朝鮮人が凶悪犯罪、暴動などを画策しているので注意すること」という内容があった。

それが世に広まり、朝鮮人、中国人、日本人(聾唖者など)が、数千人殺された。

 

数千人ですよ?

ただでさえ、震災で人が死んでいるのに。

 

わたしたちは、
こんなふうにアホになりえる。

アホになって人を糾弾して、殺しまくることがありうる
生き物です。

 

小保方晴子さんの日記を読んで
それを強く思い出しました。

 

それから、彼女の文体は、
とてもおもしろい!というか引き込まれる力があります。

 

作家としても
才能があるのでしょう。

これからの彼女の活躍を楽しみにしています。

わたしは、彼女のことがとても好きになりました。

そして「好きだ」という理由だけで、十分に応援し続けるつもりです。

 

大田 2019年 62冊目

 

 

(2019/05/12)