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アドラー心理学入門
岸見 一郎

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  • ジャンル:
    自然科学・哲学
  • 読了時間:
    1時間
  • 形態:
    Kindle
  • 読んだ人:
    大田忍
  • 評価:
    オススメ

“You are good enough now”
「あなたは今のままで十分良い」

ベストセラー『嫌われる勇気』の著者、
岸見一郎氏が、その4年前に
ベストセラーズから出版した
アルフレッド・アドラー哲学の
概要を記した本。

アマゾンの書評に
厳しく
「この本は端的にいうと「嫌われる勇気」を回りくどくわかりにくく書き直した本」
というものがありましたが、
あながち的外れでもなく、
逆に言えば、
『嫌われる勇気』はうまく昇華した
本だったと言えるかもしれない。

まず断っておきたいのは
これは心理学ではなくて
ほぼ哲学だということ。

そしてそれは
今とこれからの
人生の前途を
照らす灯火に
なる叡智でもあります。

ただ読みやすく
よりわかりやすく
実践に活かしやすいのは
やはり『嫌われる勇気』のほうです。
『嫌われる勇気』の読後に
さらにアルフレッド・アドラーについて
知りたくなった方は
手にとってみるのも悪くないかもしれません。

それでも感銘をうける
箇所はいくつかあります。

例えば、こんな引用がありました。

ある人が浜辺でヒトデを拾って海に返していました(『魂のレッスン』同朋舎)。ヒトデが波とともに浜辺に打ち上げられてくるのです。潮が引くと海辺に残されてしまいます。そのまま放っておいたら干上がってしまいます。それを見た人がいいました。「この浜には何千というヒトデがいる。全部を海に返してやるなんてできないでしょう。数が多すぎる。こんなこと、どこの浜ででもあることだ。あなたがやろうとやるまいと、たいした違いはないんじゃないかな」と。  すると彼はにっこり笑って身を屈め、もう一つヒトデを拾って海に投げ返していいました。「でもね〈この〉ヒトデにとっては大きな違いだろうね」と。  それでは私たちは何ができるか……それは非常に卑近なことかもしれません。

これは、山口周氏『天職は寝て待て』で紹介されていた、
マザー・テレサの話にも通じるものがあります。

カルカッタのスラムでの慈善活動に生涯を捧げたマザー・テレサは、1979年にノーベル平和賞を受賞した際、「世界平和のために我々は何ができるでしょうか?」と質問したインタビュアーに対して、「家に帰って家族を愛してあげてください」と答えています。

したいことを最小単位にして
考えてみると
今すぐできることがあります。

それに気づけるところも
アドラーの良いところです。

その他にも
著者自身が、
アドラーの弟子の弟子にあたる
ドライカースの講演後に、
自分をより良く見せようとした
著者に向かって、こう言っています。

「君は今のままで十分いいのだから(you are good enough now)、こんなことをしなくてもいいのだよ」

これは僕らみんなに向けられた
言葉でもあります。

 

(2018/10/03)