村上春樹の小説には、
メッセージがない。そして
生きている人がいない。
内田樹の『村上春樹にご用心』経由で
誰かの批評を読んだことがあります。
たしかにそうなのだろうと思います。
メッセージは、なく現実に生きている人が不在。
しかし、
綺麗に明確に
定義的に現実から
切り離されたフィクションは
わたしたちに、ここではない
別の場所を提供してくれます。
そこに逃げこんでも
私たちは、強くはなれません。
でも、逃げることはできる、
休むことはできる。
体力が戻ってくることはできる。
ちょっとした暖をとれたりはする。
激しい吹雪のなかの
山小屋のように。
加えて
世界も広げてくれます。知らない音楽、
知らない世界、
そして日常を文学的に
見るへんな視点も提供してくれます。
冒頭は高級なフランス料理店での
描写。ワインの味を「凝縮された食費」と
表現。
楽しい。