BRANDING TAILOR

CREATIVE LIBRARY

アフターダーク
村上 春樹

Amazonで詳細を見る

  • ジャンル:
    小説・詩・エッセイ
  • 読了時間:
    1.5時間
  • 形態:
    Kindle
  • 読んだ人:
    大田忍
  • 評価:
    オススメ

「人にはそれぞれの戦場があるんだ」

村上春樹という作家について、好きか嫌いかという話題が
のぼるとき、いつもげんなりするのは、先入観が立ちはだかっているときです。

「ノルウェイの森を読んだけど、それで嫌いになった」とか
「昔は面白かったけど」とか、それはそれで構わないのですが、
それがゆえに村上春樹まわりについての何かについて
聞く前から、もう興味がない、という状態が面倒です。

太宰や夏目漱石や遠藤周作、
または小川洋子や東野圭吾には、
ほとんど偏見の目が向けられないのに
村上春樹にだけは、強固なまでの
先入観を感じるのが、不思議です。

作品を好きでも嫌いでもどっちでも良いのですが、
「世界を広げてくれる」という点で、
私はとても尊敬しています。

村上春樹を通して
私たちは、チェーホフ、トルストイ、カポーティ、
ジョン・アーヴィング、フィッツジェラルド、
レイモンド・チャンドラー、レイモンド・カーヴァー、
はたまたマイケル・ギルモアなどまで
多くの海外の作家の作品を知る機会を得られます。

また、ジャズやクラシックなどの
曲にも多く触れる機会も村上春樹は
提供してくれます。

ヤナーチェク、リスト、
バッハ、シューマン、
多くの楽曲を様々なシチュエーションで
聞かせてくれます。

この『アフターダーク』では、
カーティス・フラーの
『ファイブ・スポット・アフター・ダーク』という
曲が出てきます。
有名な曲なので、聞いたことのある方も
多いでしょう。

その他にもいくつかのジャズから
スガシカオまで音楽がこの小説の中で流れます。

そういうものを
なんとなく聞き流しながら
ぼんやり読んで済ませて良い、
という長さであり、重さの
小説のように感じました。

わたし自身は、
これを11月の山梨の山奥で
焚き火にあたりながら
読みました。

うまく寝付けなかったので
夜中に火を熾して
ウィスキーを飲みながら
kindleで。

Kindleという単語は、
「焚き木に火をつける」
という意味なので
うってつけの状況で読んだことになります(笑)。

冒頭のセリフは、
思いがけないところで
出てきてハッとしたものです。

ここに含蓄があろうとなかろうと
しばらくの間、記憶に残りそうな気配がありました。
燃え終えた焚き火から立ち上る細い煙のように。

(2018/11/09)