『影響力の武器』の圧縮版。
わたしは、心理学専攻で、
大学でロバート・B・チャルディーニの『影響力の武器』も
しっかり読んでいたのに、「まんまとしてやられた」という経験がときどきあります。
『影響力の武器』は、
返報性という、人にある、無自覚に抗いがたい力、
を使ったテクニックを紹介したものですが、
それを知っているのに、使わず、
使われる、という恥ずかしい状態に
いたのですが、
この状態に対して本書は、
たぶん、もってこいの復習的テキストになりました。
タイトル通り、黒かったりグレーだったりしますが
使う使わないはあなたの良心でコントロールできますが、
「使われないようにする」には、
無くてはならない知識になるでしょう。
影響力の武器で紹介されている
ローボール・テクニック、
フット・イン・ザ・ドア・テクニック、
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
のうち、フット・イン・ザ・ドア・テクニックを除く2つが紹介されています。
その他、有事の際に
知っておくと命を救うかもしれない
正常性バイアス
も紹介されていました。
正常性バイアスとは、
異常な状態なのに、
(脳がパニックになることを避けて)
普通なことのように感じてしまう
思い込みのことです。
浸水してうちの中が水浸しになっても
「すぐ引くから大丈夫」
と思って非難しない人たちが
陥るのはこの正常性バイアスです。
これを知っていれば、
地震や火災、異常気象などのときに
「大したことない」と
思い込もうとおもっている自分に気づきやすくなるでしょう。
また社会的証明も紹介されていました。
みんながしていることが正しいと思う力で、
有事の際の話で言えば、
みんなが避難しないなら大丈夫に違いない
という思い込みがそれに当たります。
と、悪用できる心理術
というよりは、知っておいて損はない、
思い込みから抜け出す知識
とも言える知見を知れる良書だと思います。
(2019年 大田 56冊目)