いつも不思議に思うのだけれど、科学者たちはどうしてこう文学に精通しているのだろうか。
この本の著者のヘレン・フィッシャー博士のみならず、多くの科学的な本において、文学からの引用を多く見る。
シェイクスピア、オスカー ワイルド、カント、いろいろ。
さて、本書の残念なところは、90頁に及ぶ参考文献や注釈が割愛されているところ。
なので、そこまでさかのぼりたい方は、英語版の方をおすすめします。こちらにはキンドル版もあるので便利です。
人生において幸せでありたいのであれば(もしくは「幸せになりたい」のであれば。ただし、幸せは「なる」というより気づくことで発生する)、恋愛の構造を熟知することを避けられない。恋愛やセックスが幸福におおいに関連するうえに、「自然」つまり遺伝子の設計に任せていると幸福からかけ離れていくし、離別しやすくなります。
わたしたちは、「子孫をできるだけ多く残す」という設計がされているし、その設計は、狩猟採集生活を前提にされています。
4歳くらいまで、子どもを育てると新たな遺伝子の組み合わせを求めて、夫婦は離別しやくなっています。
これは人種や国を問わない一般性の高い傾向です。
この本の原題は、
Anatomy of loveで、直訳は、愛の解剖学です。
その名の通り、愛がどのように形成されているのか、ということが詳らかにされています。
著者は、愛の起源から未来の在り方まで記しています。
未来では、女性の活躍がめざましくなるだろうと説いています。著書は1993年に出版されたものですが、その傾向は、現代において、たしかに高くなっている気がします。AI技術の台頭が、その傾向というとか潮流を後押ししていくのではないでしょうか。男性優位の文化は、肉体労働が重要だった農耕民族が起源と言われているからです。
経営も日々もアートも大事ですが、恋愛はそのどれもと同じくらい大事な気がします。
なぜなら、それが形成するのは、幸福と子孫だから。
大田 2019年153冊目