1973年に単行本が出版されたもの。
70年代ごろの文壇の住人たちの交流を垣間見る、
阿川弘之の乗り物にまつわるどうでも良いエピソード群。
吉行淳之介が車の免許をとった理由、
井伏鱒二の自宅に設置された電話について
(檀一雄の本にも出てきたか?)、
雷が怖い倉本聰、
戦闘機に乗ったとはしゃぐ三島由紀夫など、
くすくすと笑ってしまう話を読みながら、
当時の気配のようなもの
(作家たちはなぜか海外に遠征して
見聞を広めてくる習わしがあった様子だったり、
皆変に仲良かったり)をしれて面白い。
さして読む必要はないのだろうが、
無頼派など、日本の一昔(もっと昔か)まえの
作家たちを読むなら、その当時の雰囲気を垣間見るのに
うってつけの本です。
これを読んだことをきっかけに、
いい加減、吉行淳之介にも手を出さねばと思い、
このあと読みました。
志賀直哉、芦田伸介なども登場してきます。
「紳士録」とは、
「存命で活躍している人物の情報を掲載した本」
だそうで、なるほどなるほど。
当時は、まだその呼称なかったのだろうけれど、
阿川弘之さんは、立派なオタクだったようです。
寝る前とか、昼休みとか、トイレでとか
時間のエアポケットを見つけては
ちびちびと読むのがよさそうな本でした。