本の内容の感想の前に、思うのだけれど
ビジネス書を多く読んでいると、意外なほどに
詩や文学からの引用が出てくることが多い。
ビジネスとアートというのは、
根っこの部分でけっこうつながっているんだろうな
という直感が、それらに触れるごとに育まれていると感じます。
この本もまたアルフレッド・テニスンやホイットマンなどの詩人の引用から始まるのですが、著者のW・チャン・キムとレネ・モボルニュは、文学を読んでは、感銘を受けた表現をストックしているのだな、と改めて思いました。
W・チャン・キムのブルーオーシャン戦略についての概要を知るには、先月発行された雑誌『ダイヤモンド』の2019年総予想の170P.の記事が便利です。そこにかかれているものを簡単にまとめると
1.大人気のため読まずに誤解されている「ブルー・オーシャン戦略」とは?
2.コンマリ(近藤麻理恵さん)が好例
3.世界市場において日本が再び台頭するのに必要なものは、ブルー・オーシャン戦略の見地から考えると何か?
というものです。
1.の解答は、
ニッチ戦略とも既存市場の破壊でもなく、新しい価値の創造(バリューイノベーション)が、ブルー・オーシャン戦略だというもの。
そのバリューイノベーションには技術的イノベーションが必須かと問われればノーであり、その一例が、任天堂のWiiやスイッチであり、失敗例がWii-Uであり、モトローラのイリジウムです。
2は、
コンマリさんは、整理整頓に関する商品やサービスというレッドオーシャンに、「片付ける喜び」というブルー・オーシャンをもたらしたと目されているわけです。
3に関しては、ヒューマンファクターに目を向けろ、というものでした。詳しくは、それこそこの本「ブルー・オーシャン・シフト」に書かれています。これに少し近いことが、デービッド アトキンソン氏の昨年出版された著書『『新・生産性立国論』にも書かれています。日本の労働力のレベルは世界のかなり上位にあると。ではなぜ生産性が低いかといえば、それはマネジメントのクオリティが低いにほかならないと手痛い指摘もありますが、いずれにしろ、「人」が最重要ファクターであり、それをどう活かすのか、ということが鍵になるのですが。
アトキンソン氏の考え方は、ものすごくプラグマティックで、まずは「現実を知ろ」ということ再三、主張されます。そしてその根拠は詭弁ではなく、前進するために必要な過程として共有できます。
一方で、ブルー・オーシャンは、もう少し分析的ですが、それは巨視的であると同時に微視的で、「人の心から生まれ、人の心にアプローチするもの」という要素を重視しています。とはいえ、具体的な方法論もちゃんと提示してくれていますので、ひとつひとつ実践してみたいところです。
ただ読後感としては、『サピエンス全史』にも、ありましたが、「限られたパイを奪いあう時代ではなくなった」という視点が一番の収穫だと感じました。
奪い合う、潰し合うのではなく、競争を無意味なものにする、という考えが、ブルー・オーシャン戦略にはあります。
既存の、トレードオフな考え方とは、けっこうキレイに一線を画しています。
日本の事例も巻末に付録として紹介されており、取り上げられている企業は、
Amazon の書評には、『ブルー・オーシャン戦略』を読んでからのほうがより理解しやすいとあったので、そちらも着手しています。
ところで、著書の二人は、MBAスクールのINSEADの教授たち。INSEADは、インシアードと呼び、フランスのフォンテーヌブロー、シンガポール、アブダビに校舎があり、学費は1,100万円。
出版社:ダイヤモンド社
2018/4/18 初版発行
2018/8/27 第4版読書
価格:2268円(税込)