アポカリプス(apocalypse)とかディスラプト(disrupt)とか、「それは翻訳しよーよ」って言葉までそのまま使っている、それこそペダンティックな文体にイラッとするも、それでもプロモーションの今のあるべき姿をかなり的確にわかりやすく解説しているので、もうわたしにとっては必読書でした。
イライラはしまって、得られるものを吸収したい。
D2Cとは、Direct-to-consumer(顧客へ直接)を意味して、 DTCとも表記されます。
メーカーに見えてテック企業であり、何よりもわかりやすい特徴は
プロダクトブランドではなくライフスタイルブランドだといこと。
この本にない例ですが、Appleは、パソコン会社ではなくなり、ほぼファッションブランドに近くなっています。しかも単純にファッションブランドとも言い難く、いうなればライフスタイルブランドなわけです。
Appleの広告はパソコン雑誌にではなく、ファッション雑誌に載っています。アップルウォッチはVogueに広告を載せます。そして売っているのはもはや機能ではなくて、「Apple製品を使うライフスタイル」です。もう古くなった「スタバでMACBOOK」はわかりやすい例ですが、今では地味にアップルウォッチが、その機能を果たしています。プロフィール写真でアップルウォッチをしているとき、それが意味しているのは、ライフスタイルです。
時代は、このようにライフスタイルブランドをメーカーが直接顧客に伝えるようになってきています。日本のバルミューダもそれに当てはまります。
スーツケースやマットレスなどの企業例を出してD2Cを解いてくれていますし、書籍は紙の選択も書体も文字の大きさも、そしてカバーを外したときのデザインも良い。雑に言えばすごく「ちゃんとしている」。
図でごまかしている感もほとんど感じません。個人的な考えですが、今までのブランディング論を語る企業や人は、図示するも、かえってわかりにくくしていて、しかも実質効果や意味があるのか不明なものが多く、眉唾だと思うことが多いのですが、この本にそのごまかしのようなものを感じません。
プロフィール中の「エクスペリエンス起点のクリエイティブ戦略」などの表現は、何を言っているのかわかりませんが、本書のほうは「翻訳するか英語でかけよ」と思う単語表現以外、そういう箇所はありませんでした。
ちょこちょこ文句を言っていますが、ブランディングや経営に関わる人間には必読書だと思いました。
大田 2020年131冊目(通算488冊)