昨年の2019年にノーベル経済学賞を受賞したアビジット・V・パナジー(インド出身)氏とエスター・デュフロ(フランス出身)氏両氏による書。
読んでいておもしろいのは、現代の経済が抱える問題のうちに、Technological Unemploymentという言葉があることを知ったこと。そのとおりの表現が本の中に出てくるわけではないのですが、この問題も扱っていて、この言葉が意味するところは、テクノロジーによる雇用の現象。自動運転が、たぶん大方の予想よりはやく実現するはずで、そうなると奪われる職業がいちばん想像しやすいでしょう。
これを含んだグローバルな経済的な問題に加え、貧困層に対しての経済的なアプローチが紹介されています。
この本に限らないのですが、Black Swanという本もそうだったんですが、表現がユニークで文学的です。その辺も読みやすく楽しめます。
著者ふたりともMIT(マサチューセッツ工科大)の経済学者のなのですが、パナジー氏の出自がインドというのも納得が行く内容です。
インドは、所得が低い人たちを経済活動の中心に据えた考え方を発展させてようとしてきた部分もあり、それに加えてデュフロ氏がフランス出身ということもあり、人権、人道を救うニュアンスも加味されたネガティブな現状に対してポジティブな回答の示唆、という考えにまとまるプロセスも含めて、「なるほどノーベル賞に選ばれそう!」と感じました。
パナジー氏は、わたしが日頃論文を検証する際に重視しているRCT(ランダム化比較試験)を経済学の因果関係を見つける方法論に使うように提案してきたこともあり、読みやすく親和性が高かったです。
わたしとしては、もう必読レベルでした。
大田 2020年89冊目(通算447冊)