1920年生まれのスイスのグラフィックデザイナー、Armin Hofmannのグラフィックデザインに関するマニュアル。
というかプリンシパルと練習のための教科書。
Josef Müller-Brockmann (ヨゼフ・ミュラー・ブロックマン)のGrid Systems in graphic Design (1981)とと通じるものがあり、スイスのグラフィックデザインというものがどういう構成要素からなりなっているのか理解しやすくなります。
秀逸なのは、音楽などの目に見えないものを視覚化する手法のひとつを実績として残してくれているところ。
数ヶ国語を併記しなくてはいけないというスイスの制約も、グラフィックデザインを昇華させることに一役かっています。
わたしはデザインとアートを一所懸命に分けなくてもいいと思っているのですが、Armin Hofmannのこのマニュアルを見ていると
デザインの目的は機能
だということを痛感します。
一方でアートは、
人の心を動かす(ことで作者や見るもの同士を結ぶ)表現の追求
です。
それだって機能なんですが、デザインにおける機能とは、制作者の内側が動因、動機ではなくて、他者の意図を解釈および表現のプロフェッショナルが成立させようとしているもので、アートの機能は、受け手側の解釈で成立するもので、本来は、無自覚に結びつきを希求(求める)した探求の結果のひとつに過ぎない。
なんでもいいけど。
で、デザインもアートもどっちも大事だなーと考えてるのだけれど、経済やビジネスは、ときどきデザインをさほど必要としない場面がある。それをわたしはちょっと明確にしていきたい。
ともかくこの本は、グラフィックデザインに携わるなら、ざっと目を通したほうが良い本ではあります。
大田 2020年38冊目