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長谷川潾二郎 画文集 静かな奇譚
長谷川潾二郎

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  • ジャンル:
    デザイン
  • 読了時間:
    1時間
  • 形態:
  • 読んだ人:
    大田忍
  • 評価:
    オススメ

1904年、北海道函館生まれの画家。画集と文集。

飼い猫のタローについての話が面白いのだけれど、その筆致は画風に合致しています。

若い頃はまだ何かしらの(そして同郷だからそう思うのかしれないが、北国らしき憂いを含んだ)懊悩が見て取れる。

次第に開いて健やかになっていく画風に、それでいて懊悩や憂いの名残が含まれていて、それが絵に奥行きをもたせているし、長谷川潾二郎さんのシグニチャーにもなっている。

猫好きなのに、猫の絵をあまり描かない。

静物画が多く、その多くにアトリエの窓が、花器などに写り込んで言外に場所の共通を見て取れる。

柔らかいのに冷たい色温度、

写実的なのに二次元的、

明るいのに憂いを含む。

そのアンビバレンスは、人間そのもの。

絵を描く人なのに、匂いについてこう触れている。

 

よい画はその周囲をよい匂いで染める。
よい画は絶えずよい匂いを発散する。
よい匂い、それは人間の魂の匂いだ。
人間の美しい魂の匂い、それが人類の持つ最高の宝である。

その実、良い匂いがしそうな絵です。

実際に観てみたいものです。

 

大田 2020年33冊目

(2020/02/18)