白痴を含めて坂口安吾の7つの短編が収録されています。
デカダンスとくくると少し雑になりますが、ヴェルレーヌやポーなどに通じる、退廃の美を観ることができます。
なぜ退廃のなかに美しさや妙なるものを見いだせるのか、不思議ですが、とはいえ、フロイトの言うタナトスなどを持ち出したくもないので、そのうち理解できるといいなと願っています。
「日々のストレスを軽減するみは、1日に30分ほど純文学を読むと良い」という知見が、鈴木祐の『最高の体調』という本にあったので手にしてみましたが、果たして確かにストレスが減るのを感じました。文学というか時代に生き残った物語には、人を深く魅了する力があり、そのおかげでわたしたちは、刹那「ここではない場所」や「自分ではない人」に近づけます。それが、視野を広くしてくれる。生きていくためにフィクション、小説は有効なようです。
大田 2020年14冊目