これまた、「勧めない」のは、
ここでの本の紹介は、
「ビジネスに役立つ本として」という隠れた枕詞があるからで、
個人的には大いに楽しく読めた。
阿刀田高さんの真骨頂ともいうべき
ダイジェストの力について、
大きく紙面を割いて語ってくれている。
さて、勧めない、と言い切ったものの、
このダイジェストを作る力については
ビジネスには本来大きく役立つ。
のみならず、こうして本を読んだ後に
必ずすべきは、本から
何を知ったのか、ということを
ストックすることである。
そういう意味は、
「間接的に」多く学ぶ部分がある。
ただビジネスに直接的ではない、というか。
いくぶんかの「寄り道」感を感じる。
ものを書く、創造する、ということに
主軸をおいて生きていくのであれば、
むしろ必読書になる。
さてどのような内容かといえば、
小説家であるとどうじに、
多くの必須知識をダイジェストにしてくれている
方である、阿刀田高さんの作法の開陳である。
齢70を過ぎて書き記したものだから
半ば半生を振り返っての書という面もある。
私は、
旧約聖書、新約聖書、コーラン、ギリシャ神話の
概要を彼の「知っていますか」シリーズで
読みかじった。
どれもある程度知っておいたほうが
良い必須の知識である。
これらをしらないと
ニュースも絵画も小説も
国際情勢も経済も
いまひとつピンとこないことが多い。
お世話になっている先生の
思う作法を学べる良書である。
と同時にまた
阿刀田さんは言葉遣いが気持ち良い。
最近では使われなくなった言葉を
ときどき織り交ぜて語られる。
たとえば「あらまほしい」など。
このような言葉が出るたびにきゅんきゅんしてしまう。
本を多く読むということ、
そのものには、あまり価値がない。
読んで何を得たか、
何を学んだか、
それを骨身に変えてこそ
意味が生まれる。
そう意味でも
そのメソッドを
学べる良い機会である。
さて、そうなると
「勧めない」のは
独り占めしたい意地悪な
気持ちからかも知れない。