あとがきにもありますが、加古里子さんは、ロシアのモイセーエフ舞踏団の「パルチザン」演目に出てくる、雑踏に見えて、その実各人各様のキャラクターがある多様な様子にインスパイアされて、この絵本でのカラスの描写をしてみたそうです。
多くのカラスがでてきますが、みな表情や仕事や姿が異なります。そして出てくるパンもまた、みていてワクワクしてしまいます。イタリア、ボローニャに在住のワイヤーアーティスト、小林千鶴さんのInstagramで見かけてしったのですが、この「カラスのぱんやさん」に出てくるパンのレシピ本もあるようです。
宮崎駿さんの映画『風立ちぬ』のモブシーン(大勢の人間がいっぺんに動くシーン。地震が起こるところ。)でも、同じように各人各様の描写にこだわって、大変な時間をかけていたいました。みなひとりひとりそれぞれの人生があるということを、うすぼんやりとわたしたちはこの絵本から学ぶのではないでしょうか。子供に限らず。
多くの人に、あまり好かれない烏ですが、この絵本を読むと
あ、ぱんやさんのカラスかも?と想像して笑えるかもしれません。
この絵本ひとつで、わたしたちの世界は、夕焼けのように広がっていきます。
大田 2019年127冊目。