お勧めしないけれど、
楽しめました。
村上春樹ファンが、村上春樹に新しいものを求めたり、
以前感じていたような、引き込む力を期待したりせず、
いまだにこうして長編を書ける彼の体力と気力と
ヘルシーな生き方を体感するために読むと
なかなか楽しめると思います。
これを読んで、読む方もいるかもしれないので
タイトルは伏せますが、これはいくつかの既存作品(他者の)への
オマージュのような部分があり、それが心地よく織り込まれています。
正直、毎度おなじみのパータンが出現するたびに
辟易する部分もありますが、それでも、
なんとなく楽しめました。
それというのも
わたしは、いま長い長い小説、
トーマス・マンの『魔の山』を
のんびり読んでいて、これが
おもしろいのに、遅々として進まない。
いや読み進んでいるはずなんですが、
ぜんぜん読み終わらない。
面白いけれど、とても長くて
しかし、読み終わらないことに慣れない
わたしにとっての、止まり木というか
サービスエリア的な存在として
村上春樹氏の『騎士団長殺し』は
とても良く機能しました。
サステイナブルな作家、という存在は、
もうそれだけでわたしは尊敬します。
作家の寿命が、思いの外早く尽きてしまう
という姿を、村上春樹氏は、予見するように
『ダンス・ダンス・ダンス』で描写しています。
そうならないでいるために、
どうしたら良いのか?
ということを村上春樹氏は、
常に自問し、実践してきたのでは
ないでしょうか。
その努力の結実としても
この作品は美味しく味わうことができました。
大田 2019年 50冊目