原題は Light in August。
ノーベル文学賞受賞(1949年)者のアメリカの作家、ウイリアム・フォークナー(William Faulkner)の小説。1932年に発表。
意識の流れ(stream of consciousness)というアメリカの心理学者、ウィリアム・ジェイムズの概念が文学における「人間の心のなかで絶え間なく移ろいゆく思考や感覚をそのまま記述していく手法」が用いられています。
それがゆえにか話はちょっとこんがらがっていく。
同じアメリカ南部を舞台にしていること、子どもを(腹の中、外と違うが)抱えながら、男とともにさまよう女性という構成も手伝って、ニック・ピゾラット(Nic Pizzolatto)氏の『Galveston』を思い出しました。Galvestonは、メラニー・ロランが監督の映画にもなっています。
フォークナーはちょっと読んでおこうと思って読んだ次第ですが、はたして良い小説というのはやはり日常から意識をべりっと剥がして、別世界に打ち込まれる感覚を与えてくれます。その中で、様々な対比や作家が登場人物に批判されるなど、おもしろい構造を少しずつ見つけたり、気づいたりもします。ありがたい。
大田 2020年181冊目(通算538冊)