わたしは、閉店!となったとたんににわかに聞く「惜しい」という言葉が嫌いで、同じではないが近いニュアンスで人を死を以って偲ぶのも好きではありません。そう断った上でですが、日本の47都道府県の良いものを巡り、したためた三浦春馬氏のこの本は、内容以上に深く思うところがありました。それは何かというと
これほど深く広く見聞を深めて、おそらくそれを通して自分の内側も深く広くされたであろうに、自ら命を落とすことになってしまうなんて、自分を追い込むことを良しとする考えや苦しんでこそ浮かぶ瀬もあらんという考えなど消しては元も子もないが、小さくしたいものだ
ということです。それを強く思いました。
本は、雑誌『プラスアクト』で4年かけて連載したもの。北海道の江差追分(民謡)、近江の和ろうそく、石川県の温泉、奈良県の瓦としゃちほこなど、造り手や担い手の方々と会い話した内容がまとめられたものです。ものに限らず、新旧織り交ぜた内容で飽きません。そして、そのなかのいくつかを「ああ、わたしもほしいなぁ」と思ったり、訪れてみたいという欲求が湧きます。
囚われたくないので、読みながら、三浦春馬氏の死については少しずつ忘れたいと思っていますが、身近なところにおいておいてときおり捲っては、刺激をいただきたい本です。
三浦さんが北海道の江差で聴いたであろうと江差追分はこのような歌です。
大田 2020年216冊目(通算574冊)