前回読んだ沢村貞子さんの『わたしのおせっかい談義』のときにもかんじたので、その感覚に確信を持ち始めたのですが、沢村貞子さんは、
「近所のお友だちがひとりできた喜びを提供してくれる本」です。彼女の著書は。
そして、彼女は生き延びる能力の高い方で、力の抜き方、仕事の仕方なんかけっこう参考になります。
花がある主役は、役者寿命が短いと看破して脇役に徹し、日々の思うことを筆にしたため、文筆家としても名を広めます。
言葉数が多いのに、うんざりさせるわけでもなく、正論ばかり披露するわけでもなく、それでいて淡々としすぎてもおらず(武田百合子さんは、いくぶん淡々としている気がします。保坂和志さんに通じる淡々さがある)、ほんとうに近所の友だち。作りすぎたおかずを持ってうちに来てくれて、そのまま30分ほどダイニングで話をしながら、お茶飲んだりしてそそくさと帰っていく。
そういう方を一人得たような心地よさや喜びがあります。
大田 2020年114冊目(通算471冊)