南方熊楠を再顧と思って読んでみたら、これが700円か!?と驚くほどの大作。そして楽しい。
南方熊楠は粘菌の研究者。
本を読むのに便利だからという理由で何ヶ国語もマスターする一方で汚く粗野で数学が苦手。
しかし人情は厚い。すごく貧しくても猫を飼う。
みすぼらしいのにその実力で敬られる。
昭和天皇が、和歌山県の神島(かしま)を訪れたさい、島を案内し、粘菌の標本をいれたキャラメル箱を献上した話が有名。
後年、自由闊達な生き方に見えて、不幸を感じる。長男の精神的な病など、実際に不幸を感じるかもしれない出来事もある。
しかし水木しげる氏は、猫のセリフを借りて、南方熊楠が不幸というよりは幸福な男だったのではないかと漏らしています。
あとがきで、水木しげる氏が「幸福観察会」の会員だと述べることに驚きます。おどろおどろしい漫画を描く水木しげる氏が幸福というものについて深く考えていることに。そしてその深さにも驚きます。
この漫画は、養老孟司氏の『死の壁』と『神は詳細に宿る』を思い出しました。
生と死は、綺麗には分けられない。
大田 2020年144冊目(通算501冊)