実は、井伏鱒二さんの『太宰治』を読む前に読んだので、
きれいなデカダンスだという読後感だったんですが、今一度読みたくなりました。
太宰治は、この人間失格を書き終えて1ヶ月後に山崎富栄さんと入水自殺しています。
そのプロセスも含めて切ないがゆえに魅惑的な気配も感じます。「もし恋愛するなら、死ぬ気でしたい」という言葉などに。
ロマンスも含めたデカダンス(いやデカダンスにはけっこうよくロマンスを含んでいる)と文学的な知性のケミストリーはずいぶんと心惹かれるものがあるのだなぁと体感する小説でした。
ただし、その小説の外から、太宰治氏をみてみると彼の懊悩は、個人的にいくぶんは理解できそうなこともあり、また井伏鱒二氏の視線を通して一度太宰治氏を見た後には、また別の感慨に変わってきます。
是非とはともかく必死やん、と。それに惹かれる心は止められても、畏敬の念は野放しにします。
大田 2020年 61冊目(通算419冊目)