日本なら中野香織氏や最近ならMB氏も、ファッション史をわかりやすく解説してくれる権威ですが、イギリスにおけるファッション史の権威ともいえるCally Blackmanによる、女性ファッションに比していくぶん軽視されがちなメンズウェアのここ100年の潮流にフォーカスした本。
時代に関わらずファッションの機能として通底しているのは、それが記号であるということ。どういう内容の記号であるかということが時代にそくしているわけです。時代の空気を読んで、それをデザイナーやインダストリーが目に見える形に換言していくのがファッションです。時代の空気には、イズムや思想が多く含まれているので(空気中の窒素くらい。つまり78%ほど)、「ファッションというのは時代の哲学を記号にしたもの」と捉えることができます。
つい、疎い(日本の経営者に多い気がします)ものからすると表層的なものとしてファッションを軽視しがちですが、または場にそぐわないリスクを取りかねないということでコンサバティブに偏重しがちだったりして、その知識や経験が少なく方が多いように思います。そうなるとスーツ、靴、その他の本来の意味をしらないままその記号を発していくことになります。それは、意外なほどの不利益を生じさ、しかも終生それに無自覚なままになりかねないので、ファッションについては一通り知っておくほうがずっとお得です。
今から知ろうとする場合、MB氏の著書のほうがとっつきやすいしわかりやすいのですが、それを補完するものとしてこの著書もぜひ目を通していただけると得るものが必ずあると思います。
関連して中野香織氏の『アパレル全史』もおすすめです!
より実践的な本としてはMB氏の『メンズファッションバイヤーMBが教えるビジネスコーデベスト100』もオススメします。
あ、本紙についてでですが、何がわかるのかというと今まで目にしていた男性ファッションの裏や底にある歴史的な流れです。レイアウトをふくめてエディトリアルデザインと構成がいまひとつわかりにくいのが難ですが、それでも
ダッフルコートってそんなに濡れそぼってしまって良いものなのか(笑)
とか
レザボア・ドッグスのスーツはアニエス・ベーで、サングラスが(レイバンの)ウェイファーラーだったのか!
とかわかって、いちいち楽しめます。
トレンチコートがどこから来たのかとか(塹壕)、南極探検のアムンセンとスコットたちの来ていたパーカーもバーバリーだったのか、等々知るとファッションを観る目が変わります。
大田 2020年107冊目(通算464冊)