映画関係の人と話をしたときに、彼女は「ジャームッシュがそれほど得意ではない」と漏らしていたのだけれど、そう聞いてみると彼女の意図するものは理解できたりしました。それでも、鼻につきかねないエゴを超えて、世界を肯定する力と音楽のような気配には、心打たれるし、惹かれました。パターソンという街で暮らす、パターソンというなのバス運転手の話で、彼は詩人でもある。
パターソン出身の詩人、ウィリアム・カロス・ウィリアムズの詩が何度か出てきたので、買って読んでみました。
詩を良く読まない人(わたしも少しは含まれる)の先入観を壊す世界がそこにあって、それを通して、また自分の日常に帰ってくると、窓の外から聞こえてくる車が跳ねる雨水の音の繰り返しや中断、冷めつつあるコーヒーの温度など、いろいろなものが情景を持ち始める。すごいことだと思う。エリオットだと知らない国の知らない時代に思いを馳せることができるし、エリザベス・ビショップだと女性が観る世界に移行できる。けれどもウィリアム・カロス・ウィリアムズは、今居る場所を変えることなく、位相が変わる。
サラサラと何度も何度も読みたいので、わたしはこれをkindleで買ってよかったなと思いました。
(大田 2019年78冊目)