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1973年のピンボール
村上春樹

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  • ジャンル:
    小説・詩・エッセイ
  • 読了時間:
    1.5時間
  • 形態:
    Kindle
  • 読んだ人:
    大田忍
  • 評価:
    オススメ

友だちの女のこが、
うちに遊びに来たときに、
「トイレでちょっと読んだ」と
話題にあげたので、
久しぶりに読んでみた。

内田樹氏の『村上春樹にご用心』の読後だと
またいろいろと新鮮に読めた。

 

  1. 期待したこと

  2. 得たもの

  3. 概要

 

1.期待したこと

旅に持参したので、
日常から離れた感覚と
感情の旅行。

 

2.得たもの

心地よいセンテンスと
内田樹経由の
父の不在と一人で食べる食事と
誰か親しい人と食べる食事の
描写のコントラスト。

 

3.概要

1980年に文芸誌『群像』に掲載されて、
同じ年に講談社より出版された小説。
表紙は、佐々木マキさん。
佐々木マキさんが、男性なことを
今日まで知らなかった。

ずっと悲しい気配があるなかで
主人公とその親友の「鼠」、
そしていつの間にか一緒に暮らすことに
なった双子の女の子が
登場する1973年の話。

ピンボールは、話の中心にあるだけで
僕らが追うのは、その周りを
衛星のように駆け巡る主人公と
その周りの人たちの機微。

そして、
心地の良い文章。

文章は、
レイモンド・チャンドラーのように
どこを読んでも
楽しい。

例えば……

電話には出ない。電話は死を予感した象のように何度か狂おしく鳴き叫び( 32 回というのが僕の数えた最高だ)、そして死んだ。死んだ、という言葉はまったくの文字どおりのものだった。ベルの最後の一音がアパートの長い廊下を突き抜けて夜の闇に吸い込まれると、突然の静寂があたりを被った。

というように、僕らはあっという間に
リアルな夢の中に引きずり込まれるように
情景の中に意識を潜り込ませられる。

 

声に出して読んでいると
リズムがところどころ悪い
ことに気がつく。

それでも面白い。

近年の作品と
音読で比較してみたい。

 

(2018/09/19)