きっかけは、マズローの「欲求5段階説」のリノベ版。
マズローの説は70年以上も前。再検証したらどうなる?という試みが、2010年に進化心理学の知見からなさされていて、このようにリノベされていました。
から
内容をざっくり要約すれば、マズローの欲求5段階説の最上位には「自己実現欲求」が来ていますが、自己実現欲求なんてなくて、なんといっても「子育て」がアルティメイトな欲求じゃ!というようにリノベされてます。強引にもみえますが、自己実現を求めるのが最上だったら、今ここにわたしたちもいなくね?って言われると確かにと納得せざるを得なくなります。
ちなみに、このマズローの欲求五段解説のリノベについて知ったのは、わたしが毎日チェックしている鈴木祐さんの『パレオな男』ブログのこの記事。
これは、これでおもしろいのですが、本書の感想に立ち返ると、筆致がつらい。冗長、それもたらたらというよりは、無駄口で。しかし著者のケンリック博士本人の動画を観ると、不快さは立ち上ってこないので、英語で読んだほうが良いかも知れません。翻訳者のあとがきが長い本を、わたしは基本的に警戒するのですが、本書のすれはすごーく長い。しかし内容は、得るものが多々あるので、筆致や翻訳のツラさを乗り越える試練はある気がします。
何よりも、得心したのは、
「ヘビと戦うには、その毒を認めなければならない」という表現。これは、モラルをも偏見と排して、事実を見ようとする姿勢で、橘玲の『言ってはいけない』も同じ姿勢で、わたしもすごく共感しています。
進化心理学は、統計学をベースにした心理学とは異なり、人間の進化の過程を根底にして、人間の行動や心理のダイナミズムを解き明かそうとする学問です。結果、なかなか下世話に話や、わたしたちの耳に不都合に聞こえる説が、ここから出てきます。例えば、人種による知性の違いなど。男女差も。
また、その他にも面白かったし、なるほどと思ったのは、「利己的な遺伝子は、必ずしも利己的な人間を生み出すわけではない」という表現。わたしたちは、合理的に行動しない、ということでもある。これは面白かったです。
ところで、本書では「損失忌避」と訳されていますが、これは「損失回避」として多く訳されているLoss Aversionなんだろうなと推測します。たしかに「損失回避」よりは正確なんですが、とまれ、これは「プロスペクト理論」に関連したものです。
わたしは個人的には疲れましたが、読んで良かったと思う本でした。
大田 2019年 107冊目