おそらく少し特殊な能力のある方です。
グラフィックデザイナーでも
この本の著者、正木香子さんのように
文字の違いやニュアンスに
気づける方はすくないでしょう。
「探偵ナイトスクープ」で
瞬時に四つ葉のクローバーを見つける
女の子が出演していたことがありましたが、
そういうたぐいの感覚が
正木さんにもあるのではないでしょうか。
私たちが文字に触れない日は、
ほとんどありませんが、
実のところ、文字にはいろんな種類があります。
この本には書かれていませんが、
街で警官をみかけたら
彼が身につけているベストの背面に書かれた
「警視庁 POLICE」という文字をよく見てみてください。
丸いゴシック体で書かれています。
「怖くないですよー」という
ささやかなアピールが
そこにはあります。
こんなふうに文字には
意味以外のニュアンスを
伝える能力があります。
正木さんは、
その細かい違いを
味に例えて
ブログに綴り続けていました。
ブログでは今でも
日記などをときおり更新されています。
こちらです。
どんな文字が紹介されているかというと
例えば、「肉の文字」として紹介されている書体。
漫画『ワンピース』で主人公ルフィの
名台詞ですが、ここで使われている書体がそれ、
ゴナです。
同じ書体が女性雑誌JJにも使われています。
他にも例えばこんな文字が、紹介されています。
機内食の文字
スープの文字
塩の文字
それがどんな文字なのかは、
どうか、本を直接開いて味見してみてください。
またこの本は、
著者、正木さんの特異な
個人的な記憶と結びついたものであります。
「予想に反して……」
というと失礼ですが、
正木さんはとてもきれいな
女性です。
もっとマニアックで
カサカサした方かと想像していましたが
つややかで繊細な印象を受ける
女性でした。
彼女の姿を一度みてから
本を読み進めてみると
ちょっと変わった女の子の
おもしろい話を聞きながら
お茶を飲みつつ、クッキーを
かじって過ごしているような
楽しい心持ちになると思います。
あなたが男性でも、女性でも。
自分でも気づかないでいた
世界を構築するものの裏側に
あった意図と機能する素材(文字)
のことを知ってしまうと
街がまた違って見えてくることでしょう。