ホセ・オルテガ・イ・ガセット氏は、スペインの哲学者。
この大衆の反逆(The Revolt of the Masses)は、1930年、オルテガが47歳のときに出版したもの。
この本では、現代社会において(約100年まえの現代ですが)、大衆が持つ力とその危うさについて説いています。
「大衆人は他の人びとが建設し蓄積したものを否定しながら、自分が否定しているものによって生きているのである」
無学な大衆を批判しているかと思いきや、専門家もまた「近代の野蛮人」と批判しています。批判ばっかしてじゃあどうすれば良いのかということなんですが、わたしまだそんなにはっきり読み解けていないんですけど、どうもオルテガは、白黒をロジカルにはっきりさせるということに重きをおいていないようです。知的な人間はグレーゾーンに耐えうると聞きますが、その傾向を観る気がします。
それこそほんとうに現代においてオルテガの主張や考えは、なかなか「それが何を意味しているのかはっきりとはわからないけれど気をつけろとは告げている警鐘」として読むことができます。少なくともわたしには。批判というのは、大事なことなんですが、大事ながら決定的に何かをダメにする部分もあるのでしょう。先の引用をみてもその理解は進む気がします。
現政権がダメだとしてどうれば良いのか。わたしは、ここ最近、ジャック・アタリやイアン・ブレマーなどの知の巨人と目される人々の考えを読んでいますが、いつもそこに何らかの疑いの姿勢を差しこみつつ対峙していました。いわゆる知的なエリートに対してのこの疑念は、オルテガを通して、なんというか寄る辺として少し確固としたものになった気がします。
結果、
頭の良い誰かの意見に与したい
という甘えを捨てざる得ないという考えになりました。
自分で考えて調べて考えて行動して自分で決める
ということがどうも必要になってきました。
この生き方や考え方を始めるためのピストルの音になりました、このオルテガの『大衆の反逆』が。
大田 2020年123冊目(通算480冊)