養老さんは、もうなんとなく好きで、ちょっと疲れたり、迷っているようなこころもちになったら、会いに行くおじいちゃん先生みたいなつもりで彼の著書を手にします。
この本を読んで、ちょっと感じ入るものがあったのは、まず養老さんが、冒頭から
自分がなんだか世間と折り合いが悪い
と述べているところでした。あの独立独歩、世間のことなど気にしないおちついた気配の養老孟司が、自分は世間と折り合いが悪いと考えていたなんて、となんだかホッとしたんです。それに感じ入ったわけではありませんが、養老さんが恋愛について触れているところも驚きました。
この本でいう「自分の壁」というものは、自分の世間とのズレのことでした。しかし逆説的にそのズレよりも、社会(他人)と共通の部分を探そうという話でした。それ以外にも、ズレからくるもの、共通していると思えるもの、から見えてくる自分の実態、世間の実態をひとつひとつ、手がかりをみせるように詳らかにしてくれています。
そんなわけで、なんとなく疲れたり、迷ったときなどに、おじいちゃんの話を聞くように養老さんのこの本を手に取ることをオススメします。
ショーペンハウエルが、『読書について』で、読書とは他人に考えてもらうこと、と述べていますので、読んだあとにはまた自分で考えることにしました。
大田 2020年593冊目(通算235冊)