その存在感が故にどうしても非難の目の矛先をドナルド・トランプアメリカ大統領に(なんなら似たような文脈で安倍首相にも)向けていましたが、著者のイアン・ブレマー氏は、「何がドナルド・トランプを生んだのか」を問うています。ポピュリズムがどうして発生しているのか、だれがトランプ氏を支持しているのか、ということを看過していることがアメリカを(なんなら日本もですね)ダメにするのだという警鐘をガンガンに鳴らした本で、わたしはけっこうな衝撃を受けました。自分がちょっと頭が良いとかまともであるとか思っているとポピュリズムまわりを少し見下し気味になります。それがアホだということです。盲点をがっつり突かれた感がありました。
しかし一方で強い懸念もあります。それはブレマー氏は、グローバリゼーションの失敗がトランプ誕生の遠因だと説いています。そしてその打開策に良識あるコントロール、管理の必要性も説いています。これは、ジャック・アタリ氏の主張にも似た部分がありました。
参照:ジャック・アタリ『2030年ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ』。
この識者たちが、自由主義、資本主義の弊害を是正するために掲げた知的なコントロールを提案する流れに、どうにも共産主義の発生に似た気配を感じます。共産主義は、知的な昇華哲学でもありました。それもまた大きく失敗したことは誰もが知るところです。一方でわたしは資本主義の欠点もやはり是正しなければいけないとは思っています。それがある種のコントロールによるものだとはちょっと思えないんです。しっくりくる打開策は、ミヒャエル・エンデの考えでした。金銭に限定したものでしたが、それでもそこに光明をみます。
参照:ミヒャエル・エンデ『エンデの遺言』
わたし、イアン・ブレマーもジャック・アタリも好きなんですよ、顔が。
でも盲信はできないでいます。
最近、自分で考えることができ始めてきています。
私見はともかく、多くの気付きや知見を得られるのでかなりおすすめです。
大田 2020年115冊目(通算472冊)