あたらしい健康の書
平野啓一郎さんの「分人」という言葉は、英語かつキリスト教圏発であろうインディビジュアル(Indivisual)とまっこうから対立した概念で、いや対立という言い方は正確ではなく、昇華した概念とも言えるかも知れません。
Indivisualは、不可分なという意味で、もう分けられない最小単位を「個人」と日本語訳されたわけですが、平野さんは、「わたしって一人じゃなくても良くね?」という提言されている。会社のわたしと家庭のわたしとネット上でのわたしがバラバラだっていいじゃないか?という意味で、これは「自分って一体なんなのだろう」という疑念に優しく肩に手をおいてくれるような救済でもあったりします。
その概念を平野さんは、小説を通しても伝えようとしているようです。
またこの本では、平野さんの読書の経歴なんかもみれて、それも楽しめました。彼は、アナロジーとして小説を捉える観点を持っているようでした。わたしは、小説をただ小説として捉えていたので、これは新しい観点で、世界が広がりました。
元気になるし、世界が広がる本でした。
(大田 2019年90冊目)